ては(読み)テハ

デジタル大辞泉 「ては」の意味・読み・例文・類語

て‐は

[連語]接続助詞「て」+係助詞「は」。上に付く語によっては「では」とも》
危惧・不都合などの感情をもたらす条件を仮定して示す。…たら。「けが人が出ては大変だ」「死んではなんにもならない」
反駁はんぱく感心などの強い感情をもたらす原因となる条件を示す。…たからには。「そこまで言われては黙っていられない」「これだけやっつけられては反論する気も起きない」
二つの動作作用などが対になって繰り返される意を表す。「幼い頃は電車を見ては喜んでいた」「姉はいつも洋服を脱いでは着て楽しんでいる」
その条件のもとでは必ず、または常に同じ結果になる場合の、その条件を示す。「慢心していては勝てない」「せいては事を仕損じる」「遊んではよい成果が得られない」
(「…てはみる」の形で)よい結果が期待できない、あるいは自信がもてない状況のもとで、あることを行う意を表す。「考えてはみるよ」「修理してはみるけれど完全に直るかどうか」
(多く「…てはどうか」の形で)ある事柄をするよう勧める意を表す。「書いてみてはどうだろう」
[補説]うちとけた会話では「ちゃ」「じゃ」「ちゃあ」「じゃあ」となることもある。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「ては」の意味・読み・例文・類語

て‐は

  1. ( 接続助詞「て」に係助詞「は」が付いたもの。上に来る語によって「では」とも。現在では「て(で)わ」と読んでいる ) 「て」および「は」の用法に応じて、いろいろな意となる。
  2. ある状態や動きが生ずる前提となる事情を示す。…の事情のもとでは。…した以上は。
    1. [初出の実例]「起きもせず寝もせで夜を明かしては春の物とてながめ暮らしつ」(出典:伊勢物語(10C前)二)
    2. 「この世にうまれては願はしかるべき事こそ多かめれ」(出典:徒然草(1331頃)一)
  3. 下に打消、または逆接の表現をともない、否定的事情を導き出す条件を示す。
    1. [初出の実例]「えけしきばみては言はで」(出典:平中物語(965頃)二九)
    2. 「怪我があってはならぬ」(出典:浄瑠璃・曾根崎心中(1703))
  4. 仮定の意を表わす。…たならば、…たら。
    1. [初出の実例]「このたびいきては、又は来じと思へるけしきなれば」(出典:伊勢物語(10C前)三三)
    2. 「てめへなんぞとくらべてはとうしみに釣り鐘だ」(出典:洒落本・美地の蛎殻(1779))
  5. 条件に対して常に同じ結果が生ずる事を表わす。…と。
    1. [初出の実例]「鹿の縁のもとまで来てうちないたる。ちかうてはなつかしからぬものの声なり」(出典:更級日記(1059頃))
    2. 「智恵出でては偽あり」(出典:徒然草(1331頃)三八)
  6. 対応する動作、事象が反復して起こることを表わす。
    1. [初出の実例]「生絲のいとを長うむすびて、一つむすびては、ゆひゆひしてひきたてたれば」(出典:蜻蛉日記(974頃)上)

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