改訂新版 世界大百科事典 「ディクディク」の意味・わかりやすい解説
ディクディク
dik-dik
偶蹄目ウシ科ディクディク亜科Madoquinaeの哺乳類の総称。わずかにゾウの鼻を思わせるチューブ状にのびた鼻をもつアフリカ産の小型のアンテロープ。四肢は細く長く,体型は優美。後肢は前肢よりも長いが,ふつう曲げられているため,前半身よりも後半身のほうが下がった独特の姿勢をしている。雄のみにある角は短く頭の房毛(ふさげ)にほとんど隠れる。体色は黄褐色ないし赤褐色。体長52~56cm,尾長3~6cm,体重3~6kg。乾草地帯の深い茂みに,雌雄のつがいで5~20haのテリトリーをつくってすむ。敵の接近などに驚くと突然とび跳ね,跳ねながらジグザグに逃げる。このとき,〈ディクディク〉と聞こえる鳴声を上げるためこの名がついたという。踏みかためた一定の通路をつたって,朝と夕方,ときに夜間も活動し,おもに木の葉を食べる。雌は妊娠期間169~174日で,ふつう1子を,年に2回,4~5月と11~12月に生む。子は誕生時に体重600g,15~18ヵ月で成熟する。アリトリアディクディクMadoqua saltiana,ギュンターディクディクM.guentheri(=Rhynchotragus guentheri)など4種がある。
執筆者:今泉 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報