アンテロープ(読み)あんてろーぷ(英語表記)antelope

翻訳|antelope

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アンテロープ」の意味・わかりやすい解説

アンテロープ
あんてろーぷ
antelope

哺乳(ほにゅう)綱偶蹄(ぐうてい)目ウシ科のうち、ウシ類、カモシカ類、ヤギ類、ヒツジ類を除いたものの総称であるが、系統的には一つのグループではない。レイヨウ、あるいは混同されてカモシカ(羚羊とも書くため)ともよばれる。ニルガイヨツヅノレイヨウなど少数の種がインドアジア中央部に生息するが、多くはアフリカ草原砂漠、ときに森林にすむ。ほぼすべてが植物食で、多くは早朝と夕暮れに食物をあさる。大きさはさまざまで、最大のジャイアントイランド(肩高175センチメートル、体重450~900キログラム)から、最小のローヤルアンテロープ(肩高25~30センチメートル、体重3.5キログラム)まである。体は走るのに適応し、胴と足が細く、頸(くび)が長く、頭を高く保っている。ひづめは小さく、体毛は短く、美しい色である。角(つの)は雌雄にあるものと、雄だけにあるものとあり、形はコルクの栓抜き状に巻いたものや、竪琴(たてごと)形、槍(やり)形、スパイク形、さらにセーブルアンテロープのようなサーベル形まで、変化に富む。目の下に臭い液を出す穴(眼下腺(がんかせん))があるものが多いが、ブッシュバックのようにないものもあり、乳頭の数もさまざまである。

 種類数は多く100種を超え、次のグループに分類されている。

(1)ブッシュバック亜科 中形から大形で、角(つの)は雄にだけあって渦巻形。角の前面基部から、角のねじれにしたがって先まで伸びる明瞭(めいりょう)な分水嶺(ぶんすいれい)のような線(稜(りょう))がある。アフリカとインドに分布し、砂漠や木のない草原にはほとんど生息しない。

(2)ハーテビースト亜科 大形で、角は雌雄にあり竪琴(たてごと)形で、明瞭な稜はない。アフリカの開けた草原に多い。

(3)オリックス亜科 大形で、角は雌雄にあり長い槍形、栓抜き形、あるいはサーベル形である。アフリカやアラビアの砂漠や開けた林などにすむ。

(4)リードバック亜科 中形から大形で、角は雌になく、竹の節のような輪状隆起がある。アフリカの水辺に近い草原を好む。

(5)インパラ亜科 中形で、角は雌になく、正面から見ると幅の広い竪琴形。アフリカの明るい林にすむ。

(6)ガゼル亜科 中形で、角は雌にはないか、あっても小形で、横から見ると緩いS字形。アフリカやアジアの草原など開けた場所にすむ。

(7)ダイカー亜科 小形で、角は普通雌雄にあるが、小さくスパイク状で耳より短い。アフリカの森林にすむ。

(8)ローヤルアンテロープ亜科 小形で、角は普通雄にだけあるが、長くはない。アフリカの森林、草原、岩場などにすむ。

[今泉忠明]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アンテロープ」の意味・わかりやすい解説

アンテロープ
antelope

レイヨウともいう。偶蹄目ウシ科の動物のうち,ウシ亜科とヤギ亜科を除いたブッシュバック亜科 Tragelaphinae,ダイカー亜科 Cephalophinae,ローンアンテロープ亜科 Hippotraginae,ブラックバック亜科 Antilopinaeに属する動物の総称。四肢がほっそりと長く,体毛は短くなめらかで,角は多くは眼のすぐ上から左右が接近して生えているなどの特徴をもち,臭腺をもつものが多い。すべて反芻胃をもつ。ほとんどのものがアフリカに分布するが,中近東からインドにもみられる。

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