デスチュット・ド・トラシ(読み)ですちゅっとどとらし(その他表記)Antonie Louis Claude Destutt de Tracy

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

デスチュット・ド・トラシ
ですちゅっとどとらし
Antonie Louis Claude Destutt de Tracy
(1754―1836)

フランスの哲学者。パリに生まれ、軍隊に入る。フランス革命直前の三部会に貴族代表として参加したが、革命時には逮捕された。のち総裁政府下では主として教育行政の立案に参加。哲学的にはコンディヤック感覚論系譜を引く。感覚を基礎にして観念形成、展開を研究し、これを観念学(イデオロジーidéologie、フランス語)と名づけた。その際、コンディヤックとは異なり、意志、判断、想起も、感覚と同じく観念を構成する究極的要素として認められている。そして、この狭義の観念学(人間の心理作用の分析)から、倫理、教育、政治の理論を導き出すことを企てた。主著には、この構想を述べた『観念学の原理』5巻(1801~1815)がある。

[香川知晶 2015年5月19日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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