フランスの哲学者。9月30日グルノーブルに生まれる。パリで神学を修め、ミュローの修道院長となったが、主としてパリのサロンでディドロやルソーなどの啓蒙(けいもう)思想家と交わり、彼らとの交遊を通して感覚論の哲学を構想した。実際、主著『感覚論』(1754)の有名な「彫像」の比喩(ひゆ)を彼に示唆したのは、サロンの常連フェラン嬢であった。
最初の著作『人間の認識の起源に関する試論』(1746)はほぼロックの認識論を継承しているが、ことばの果たす役割を強調したところに彼の特色がある。感覚に由来する単純観念はことばと結び付くことによって、初めて他の観念と結び付くことができる、というのである。『体系論』(1749)は人間精神の体系的発展を歴史的に説明することによって、デカルト、スピノザ、ライプニッツらの思弁的形而上(けいじじょう)学に「最後の一撃を食らわせた」。
1752年ベルリン・アカデミーに迎えられ、1758~1767年パルム公の世継ぎフェルディナントFerdinand de Bourbon(1751―1802)の傅育(ふいく)官を務めた。帰国後1768年アカデミー・フランセーズの会員に選出される。『商業と政治との相関的考察』(1776)で、富はすべて労働に基づくと指摘したことから、彼もまた経済学の父の一人に数えられている。コンディヤックはときおり唯物論者あるいは仮面の無神論者とみなされているが、彼自身は自らキリスト教徒であると信じ、そう述べている。しかし彼が観念学派idéologistesの真の創始者であることに異論の余地はない。ほかに『動物論』(1755)、『学習課程』(1775)、遺稿『論理学』(1780)、『計算の言語』(1798)などの著作がある。1780年8月3日没。
[坂井昭宏 2015年5月19日]
フランスの哲学者。法服貴族マブリ子爵を父としてグルノーブルに生まれた。パリで神学を学び,1740年僧職につく。当時まだ無名のディドロ,ルソーたち新時代の知識人と親しく交わった。58年から9年間ルイ15世の孫,大公子フェルディナンの家庭教師としてイタリアのパルマに滞在,のちにその《講義録》(1775)を出版した。67年に帰国,翌年フランス・アカデミーの会員に選ばれた。晩年はボジャンシーの近くの田園に隠棲した。哲学的主著には,《人間認識の起源に関する試論》(1746)と《感覚論》(1754)がある。前者ではロックの学説を継承し,人間の認識の起源として感覚と反省の二つを認める立場をとった。しかし後者では,この立場をさらに徹底させ,人間の精神活動のいっさい(記憶,判断,欲望)を感覚の変形として一元的に説明した。この理論を証明するために彼が構想したのが,〈私たちと同じように内部が組織されている〉立像で,この立像に順次賦与した嗅覚,聴覚,味覚,視覚,触覚の組合せによってしだいに精神的機能が形成されていく様相を,思考実験的に示した。なお彼は当時のエコノミストと直接のかかわりはなかったが,その著書《商業と統治との相関的考察》(1776)によって,近代経済学の創始者の一人とみなされている。
→感覚論
執筆者:中川 久定
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…いっさいの認識は感覚のみに由来すると主張するか,それとも感覚がいっさいの認識の必要,かつ十分な条件であると主張する哲学的立場。sensualisme(感覚論)という用語は19世紀初頭以来,フランスで使われており,フランスの《アカデミー辞典》には,1878年版から採録されている。イギリスでは,sensualistという語は,すでに18世紀以来使用されていたが,この語は語源どおり〈快楽主義的〉〈肉欲主義的〉という軽蔑的意味しかもっていなかった(バークリー《アルシフロン》第2巻,16章)。…
…17世紀,18世紀の西欧で近代市民階層の台頭にともなって広くおこなわれ,市民社会形成の推進力となった思想運動の総称。上記の英語名も,ドイツ語のAufklärung,フランス語のlumièresも,いずれも光ないし光によって明るくすることを意味する。〈自然の光〉としての人間生得の〈理性〉に全面的に信頼し訴え,各人があえてみずから理性の力を行使することによって,カントの言い方によれば,〈人間がみずからに負い目ある未成熟状態から脱すること〉へと働きかけ,こうして,理性的自立的な人格の共同体の実現を目指すことにその目標はあったと考えられる。…
…知,情,意によって代表される人間の精神作用の総体,もしくはその中心にあるもの。〈精神〉と同義とされることもあるが,精神がロゴス(理性)を体現する高次の心的能力で,個人を超える意味をになうとすれば,〈心〉はパトス(情念)を体現し,より多く個人的・主観的な意味合いをもつ。もともと心という概念は未開社会で霊魂不滅の信仰とむすびついて生まれ,その延長上に,霊魂の本態をめぐるさまざまな宗教的解釈や,霊魂あるいは心が肉体のどこに宿るかといった即物的疑問を呼び起こした。…
※「コンディヤック」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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