日本大百科全書(ニッポニカ) 「トンキンイトヨリ」の意味・わかりやすい解説
トンキンイトヨリ
とんきんいとより / トンキン糸撚
palefin threadfin bream
[学] Nemipterus thosaporni
硬骨魚綱スズキ目イトヨリダイ科に属する海水魚。奄美(あまみ)大島、南西諸島、台湾、タイランド湾、インドネシア西岸など西太平洋に分布する。体は長紡錘形でやや側扁(そくへん)する。体長は体高の2.8~3.4倍。目は吻端(ふんたん)と胸びれの基底上端を結ぶ線より上にある。眼径は吻長より短い。頭頂部の鱗(うろこ)は眼窩(がんか)の後方から中央部付近までくさび形に伸びる。頬(ほお)の鱗は3列。背びれ棘(きょく)部の鰭膜(きまく)は深く切れ込まない。尾びれは深く二叉(にさ)し、両葉の先端はとがり、上葉は長いが、糸状に伸びない。胸びれと腹びれは長く、臀(しり)びれ始部またはその付近に達する。最大の体長は約22センチメートルで、普通は16センチメートルほど。体は背側面では桃色で、側面中央部に2本の細い黄金色の水平線が走る。上の線は前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の後縁上方から尾びれ基底上部に、下の線は主鰓蓋骨後縁上部からわずかに下方へ湾曲して、尾びれ基底中央部に達する。背びれは淡桃黄色で、鮮黄色の縁辺と、その下に淡暗色の線をもつ。尾びれの上葉の先端は鮮黄色。水深50~100メートル付近の砂泥底にすみ、魚類、甲殻類、軟体類、多毛類などを食べる。釣り、底引網で他のイトヨリ類と混獲される。南シナ海では漁獲量はモモイトヨリに次いで多い。肉は白身で柔らかく、煮物、焼き物、蒸し物などにするとおいしい。
[尼岡邦夫 2018年3月19日]