日本大百科全書(ニッポニカ) 「モモイトヨリ」の意味・わかりやすい解説
モモイトヨリ
ももいとより / 桃糸撚
forktailed threadfin bream
[学] Nemipterus furcosus
硬骨魚綱スズキ目イトヨリダイ科に属する海水魚。南西諸島、台湾、タイランド湾、南シナ海、フィリピン諸島、オーストラリアの北西岸など西太平洋、東インド洋に分布する。体は長紡錘形で、やや側扁(そくへん)する。体長は体高の3.0~3.9倍。目は吻端(ふんたん)と胸びれの基底上端を結ぶ線より上にある。眼径は吻長に等しいか、それより長い。頭頂部の鱗(うろこ)は眼窩(がんか)の後方から中央部付近までくさび形に伸びる。頬(ほお)の鱗は3列。背びれ棘(きょく)部の鰭膜(きまく)は切れ込まない。尾びれは深く二叉(にさ)し、両葉の先端はとがるが、上葉は糸状に伸びない。最大の体長は約23センチメートルであるが、普通は18センチメートルほど。体は背側面では桃色で、腹側面では銀白色。背面に9個の不明瞭(ふめいりょう)な帯状斑(はん)があり、それぞれは側線の下まで伸びる。前部から3番目のものはいくぶん暗くて、より明瞭で側線の起部の下で赤みがかった斑点になる。背びれは淡いバラ色で、ときには黄色みを帯び、外縁は赤色。臀(しり)びれは青白色で、基部近くに透明または黄色っぽい点が並ぶ。尾びれは黄色みを帯びたバラ色で、ひれの下縁は白い。水深8~100メートルの砂泥底に生息する。成長の過程で雌から雄に性転換する雌雄同体魚なので、小形魚に雌が、大形魚に雄が多い。おもに甲殻類や小魚を食べる。オーストラリアでは成熟魚は年中みられるが、11~12月にもっとも多い。尾びれの上葉が伸長しないタイプのイトヨリダイ類のうち、本種は眼径が吻長以上あること、尾びれ上葉先端と背びれの縁辺は赤いことで他種と区別できる。
[尼岡邦夫 2018年7月20日]