改訂新版 世界大百科事典 「ドレッシングテーブル」の意味・わかりやすい解説
ドレッシング・テーブル
dressing table
化粧用の鏡と引出しを備えたテーブル。ヨーロッパでは17世紀後期に現れ,引出しを備えたテーブルの甲板に回転式鏡を取り付けた形式がまず流行した。18世紀になると,化粧テーブルの構造と形態は複雑かつ精巧になった。甲板の上に取り付けられた鏡はテーブル中央の引出しのなかに組み込まれ,その左右に仕切壁付き引出しを備えた両袖式化粧テーブルが流行した。サロン文化が隆盛を極めた18世紀後期フランスでは,プードルーズpoudreuseとよぶ小型の化粧テーブルが貴婦人用に設計された。これは折畳み式化粧鏡や燭台その他精巧な機構を備えており,全面に花模様の寄木細工やマルタン塗とよばれる漆の装飾が施された。イギリスではジョージ4世の時代に,ボー・ブランメルBeau Brummelとよぶ化粧テーブルが現れた。これは希代のだて者G.B.ブランメルの名を借りたもので,折畳み式の鏡,燭台,引出し,棚などを備えた男子専用のものである。アメリカではロー・ボーイlow boyとよぶ小型の化粧テーブルが人気を博した。これはカブリオル脚で,中央の引出しを開けると鏡が自動的に現れるしかけを備え,機能的なデザインである。19世紀前期のアンピール時代には,化粧鏡は再び甲板の上に固定され,化粧テーブルは大型化の傾向を示した。ビクトリア時代には両袖に戸棚を取り付け,甲板の中央に大型の化粧鏡を配した豪華なドレッシング・テーブルが流行した。
→鏡台
執筆者:鍵和田 務
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報