改訂新版 世界大百科事典 「ナシヒメシンクイ」の意味・わかりやすい解説
ナシヒメシンクイ (梨姫心食)
oriental fruit moth
Grapholita molesta
鱗翅目ハマキガ科の昆虫。翅の開張1~1.5cm。前翅は黒地に青色鱗を散布し,濃黒色線が多数あり,翅底部の中央はやや白っぽい。ほぼ全世界の温帯に分布し,日本には明治末期に侵入したものと推定され,ほとんど全国に広がった。幼虫は,リンゴ,ナシ,モモ,スモモ,サクラ,ビワなどバラ科果樹の重要な害虫である。寒冷地では年2~3回,温暖地では年4~5回発生する。幼虫は樹皮の間などに繭をつくってその中で越冬し,翌春に成虫が羽化する。幼虫は新梢(しんしよう)内部にトンネルを掘って食害するので先が枯れて折れ曲がる。果実ができるころには果肉部や果心部に侵入して食い荒らす。卵はおもに葉裏や果実の表面に産みつけられる。本種によく似たリンゴコシンクイG.inopinataは,東北地方でリンゴの果実に侵入して果肉を食べる害虫として注目されている。本来は野生のズミやカイドウに寄生していたものが,近年になってからリンゴにつくようになったと推定されている。
執筆者:井上 寛
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報