改訂新版 世界大百科事典 「ズミ」の意味・わかりやすい解説
ズミ
toringo crab apple
Malus toringo (Sieb.) Sieb.ex Vriese
日当りのよい丘や山地に生える,バラ科リンゴ属の植物。コリンゴともいう。落葉する低木または小高木で,高さ10mほどになることもある。幹は灰黒色を帯び,よく枝分れして,小枝はしばしば,とげになる。葉は長楕円形から卵形で長さ3~7cm,縁に鋸歯があり,普通は両面に軟毛が生える。4~5月,枝先にそれぞれ5~7個の花をつける。花冠は直径2~3cm,花弁は5枚で広楕円形,白色で,つぼみのうちは淡い紅色を帯び,美しい。おしべは20本。果実は球形で,径0.5~1cm,9月ころに紅色に熟する。北海道から九州までひろくみられ,朝鮮にも分布している。ズミは“染み”から変わったものといわれ,樹皮は黄色の染料になる。また,リンゴの台木として利用されることもある。
ときにズミノキともいわれるものに,オオズミ,一名オオウラジロノキM.tschonoskii(Maxim.)C.K.Schneiderがあり,葉は卵形または楕円形で大きく,本州と四国に生える。また,ズミによく似たものでは,エゾノコリンゴM.baccata Borkhausen var.mandshurica(Maxim.)C.K.Schneiderが本州中部以北と北海道にみられ,中国大陸などにも分布している。なお,リンゴ属の野生のものには,ほかにノカイドウM.spontanea MakinoとツクシカイドウM.hupehensis Rehderが九州にあるが,ともに生育地は限られている。また,この属のハナカイドウ(カイドウ)は中国原産で,観賞用に栽植される。
執筆者:山中 二男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報