改訂新版 世界大百科事典 「ナツァグドルジ」の意味・わかりやすい解説
ナツァグドルジ
Dashdorzhiin Natsagdorzh
生没年:1906-37
モンゴルの詩人,作家。貧窮貴族の子としてトシエト・ハーン部ダルハン親王旗(現,トブ・アイマクのバヤンデルゲル・スム)に生まれる。少年期に革命(1921)を体験,1922年モンゴル人民党(のちの人民革命党)に入党,党活動に従事する。25年以降29年までソ連邦およびドイツへ留学。帰国後は科学委員会(科学アカデミーの前身)研究員としてモンゴル語,モンゴル史を研究するかたわら,詩人,作家としての活動を開始するが,当時の極左的政治状況のもとで32年逮捕され,約半年投獄される。こうしたなかで34年出版された12連詩《わが土地》は,作者自身を育くんだモンゴルの大地の美しさを,モンゴルの歴史と革命への思いをこめながらうたいあげたもので,モンゴル近代詩の傑作とされ,現在でもひろく愛誦されている。ほかにも,詩,戯曲を中心に多くの著作がある。不遇のうちに早死するが,今日では最大の近代詩人・作家として敬愛され,その《選集》は,1945年以降3度にわたり刊行されている。
執筆者:中見 立夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報