南ヨーロッパ原産のキンポウゲ科の一・二年草。和名はクロタネソウ。5月に咲く青または淡紅色,白色の花の形と,羽状に細かく裂けた柔らかい葉の感じが喜ばれる。草丈は約50cm,多数分枝して細裂した葉をつけ,枝先に細裂した葉状の苞片をつけて,アネモネに似た一重または重弁の花をつけるが,花弁に見えるのは萼片で,真の花弁は退化してみつ腺状の鱗片となっている。おしべは多数,子房は5心皮から成るが,基部は合体して複子房を形成し,成熟すると径3cmほどの風船のように膨らんだ蒴果(さくか)となる。この果実には柱頭が尾状に宿存して,その形が悪魔のようにみえる。熟した果実には黒色の種子があるので,和名はこれにちなむ。この種子はニゲラ油を含み,メロンの香りがするが,成分はアルカロイドのダマセニンdamascenineである。
種は秋まきとするが,低温で発芽し,光を嫌うので覆土する必要がある。また移植を嫌うので,直まきして間引きして育てるか,小鉢にまいて育てた苗を大鉢に移すか,鉢を抜いて花壇に定植する。越冬は軽い霜よけを必要とする。花は切花,鉢植え,花壇に利用されるが,蒴果はドライフラワーとして用いられる。
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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