日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニトロフミン酸」の意味・わかりやすい解説
ニトロフミン酸
にとろふみんさん
石炭または亜炭を硝酸あるいは硝酸と硫酸で低度に酸化分解して得られるフミン酸のこと。肥料としては、このニトロフミン酸にアンモニアを反応させたニトロフミン酸アンモニウムや、水酸化マグネシウムまたは焼成蛇紋岩の粉末を加えて反応させた腐植酸苦土肥料(アズミン)、炭酸水素カリウムもしくは水酸化カリウムを反応させた腐植酸カリ肥料などがあり、これらをまとめて腐植酸系肥料という。ニトロフミン酸の特徴は、カルボキシ基(カルボキシル基)、フェノール性ヒドロキシ基、メトキシル基などの官能基をもつことである。このようなカルボキシ基、フェノール性ヒドロキシ基による高い陰電荷により、陽イオン交換容量(CEC)が高くなり、保肥力が増大する。また腐植酸系肥料は、含有する窒素、カリ(カリウム)などの肥料成分の肥効に加え、フミン酸のキレート作用(金属イオンと有機物との化合)によって、これら肥料成分の植物による吸収利用が促進されるばかりでなく、腐植酸を土に補給して団粒化の促進、リン酸固定抑制など土壌の改良効果もあわせねらった有機質の販売肥料で化学堆肥(たいひ)ともよばれる。普通畑よりも野菜畑、ハウス土壌、床土で効果が高く、また施肥法としては全面施用よりも根圏に集中して施用するのがよい。
[小山雄生]