亜炭(読み)アタン(その他表記)lignite

翻訳|lignite

デジタル大辞泉 「亜炭」の意味・読み・例文・類語

あ‐たん【亜炭】

褐炭一種で、炭化程度が低く、発熱量の小さいもの。

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精選版 日本国語大辞典 「亜炭」の意味・読み・例文・類語

あ‐たん【亜炭】

  1. 〘 名詞 〙 ( 石炭に亜(つ)ぐ意 ) 炭化度の低い石炭の一つ。褐色または黒褐色木質組織を残しているものもある。主として第三紀地層中に存在。亜褐炭。磐木(いわき)

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改訂新版 世界大百科事典 「亜炭」の意味・わかりやすい解説

亜炭 (あたん)
lignite

広い意味の石炭のなかで,生成が地質年代的に最も若く,したがって石炭化度が最も低いものを,日本で亜炭と称している。その地層は,新生代新第三紀に属する。淡褐色~褐色で木材の組織が明らかに残っている木質亜炭と,光沢のない褐色~暗褐色で固い土くれのような感じの炭質亜炭の別がある。掘り出した状態では50~70%の水分を含み,乾燥すると板状にはがれたりひび割れたりして粉化する。乾燥しても発熱量は低い。日本各地に分散していて数億tの亜炭が埋蔵されているが,個々炭田の規模は小さい。また前述のように燃料としての価値が低いので,深さ100m以内かせいぜい200mまでのものしか採掘の対象にならない。そのため,炭鉱の生産規模も小さく,用途は産地周辺の雑燃料にとどまる。それでも,第2次世界大戦後の燃料不足の時代には,最盛期の1950年代半ばで350~400の炭鉱から150万~170万tの年産があった。主産地は,宮城,山形,愛知,岐阜,滋賀の諸県である。この生産量は,当時の一次エネルギー供給の全体に対して,1~1.2%にあたる。しかしその後は,国内の石炭や輸入石油の供給が豊富になって,亜炭の生産は減少した。70年代前半には年産10万tを割ってさらに減りつづけ,エネルギー源としての重要性はなくなった。

 諸外国では一般に,日本の亜炭に相当するものを,褐炭ととくに区別していない。したがって,亜炭に英語をあてるときはligniteとするが,英語のligniteの訳語としては,褐炭を用いるのが普通である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「亜炭」の意味・わかりやすい解説

亜炭
あたん
lignite

太古の樹木が石炭化の過程で変化したものとして、もっとも石炭化が進んでいない石炭であり、石炭分類上、褐炭に含まれる。木材組織の形を残しているものを木質亜炭、それをほとんど消失しているものを泥質亜炭という。炭素含有量は66~70%程度で、水分、灰分を多く含み、発熱量は1キログラム当り3000~4000キロカロリー程度で、燃料価値は低い。地質年代では石炭紀からペルム紀に属するものもあるが、概して新しい年代に多い。生成機構に関しては定説がないが、埋没深度が浅く、地熱の作用をあまり受けなかったものと考えられる。生産地としてはアメリカのノース・ダコタ亜炭が有名である。日本では宮城、山形、岐阜などの諸県に産するが、いずれも小規模、地域的なものとなっている。

[大内公耳・荒牧寿弘]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「亜炭」の意味・わかりやすい解説

亜炭
あたん
lignite

石炭のうち,炭化度の低いものをいう。鉱業法では石炭と区別して扱うが,学術的には褐炭に含められる。木質亜炭は木理を有し灰分が少ないが,採掘後放置して乾燥すると板状に湾曲して剥離したり,小片に破砕しやすい。炭質亜炭は乾燥すると粘土が乾燥したときのように亀裂を生じる。石炭よりも水分,酸素の含有量が多く,炭素含有量は少ないので,発熱量は低い(約 4000kcal/kg)。日本ではおもに東北地方で産出され,工業燃料や一部原料として利用されている。主要な多産国はドイツ,東ヨーロッパ諸国などである。

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百科事典マイペディア 「亜炭」の意味・わかりやすい解説

亜炭【あたん】

炭化度の低い石炭,褐炭のうち発熱量の低いもの。木質あるいは炭質,湿分20〜30%。燃料用価値は低いが,第2次大戦後の一時期,使用された。
→関連項目褐炭石炭炭鉱

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岩石学辞典 「亜炭」の解説

亜炭

褐炭(brown coal)と同義.亜炭は行政上名付けられた日本独自の名称[地学団体研究会 : 1996].

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化学辞典 第2版 「亜炭」の解説

亜炭
アタン
lignite

[同義異語]褐炭

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の亜炭の言及

【褐炭】より

…広義の石炭を石炭化度によって二大別するとき,石炭化度の低い範囲のものを褐炭,高い範囲のものを狭義の石炭という。この場合の褐炭brown coalは,広義の石炭を石炭化度によって4段階(無煙炭,歴青炭,亜歴青炭,褐炭)に区分をしたときの亜歴青炭(石炭化度の高いほう)と狭義の褐炭lignite(低いほう)を包含する。日本でもこの4区分はあるが,普通は褐炭という呼び方はされず,褐炭のうち,とくに石炭化度の低いものを亜炭とし,それ以外は石炭と総称している。…

※「亜炭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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