改訂新版 世界大百科事典 「ハカス語」の意味・わかりやすい解説
ハカス語 (ハカスご)
Khakas
地名をかぶせてアバカン語(アバカン・タタール語)またはエニセイ・タタール語とも呼ばれた。1989年現在,旧ソ連内に約8万人のハカス族がいて,そのうち8割がハカス語を母語とする。ハカス(ハカシア)共和国(現,ロシア連邦。人口56万7000)ではハカス族は11.1%にすぎず,ロシア人のほうが79.5%で絶対多数を占める。ハカス族は仏教徒である。言語の系統としてはチュルク諸語に属し,ショール語,ヤクート語,キルギス語などに近い。ハカス語はショール族の文字言語でもある。ハカス語のなかで著しい方言差を示すカマス語Kamassianは,もともとサモエード諸語を話していたカマス族がハカス語に同化したものである。母音はa,з,ы,y,ÿ,o,ö,иのほかにiがある。iはи[i]とз[ɛ]の中間音である。歴史的には古代ウイグル語と古代キルギス語に関係がある。1924年にロシア文字で書く試みがあり,のち29年にローマ字正書法を採用したが,39年以降はロシア文字正書法に移った。
執筆者:柴田 武
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報