改訂新版 世界大百科事典 「ハグマノキ」の意味・わかりやすい解説
ハグマノキ
smoke tree
Venetian sumac
Cotinus coggygria Scop.
観賞用に栽培されるウルシ科の落葉低木または小高木で,高さ8mに達する。葉は互生し,卵形または倒卵形の単葉で,長さ3~8cm。6~7月ごろ,小枝の先端に長さ15~20cmの円錐花序を出し,多数の帯紫色の小さい花をつける。花は雑性で径3mm,大部分は不稔性で落花後,花梗に長い開出した帯紫色または帯緑色の長毛をつけて,花序全体が煙のように見えるので,smoke treeの英名がついた。萼片,花弁,おしべはそれぞれ5個,子房は1室。果実は直径3~4mmの腎形の核果で紅熟する。ヨーロッパ南部からヒマラヤ,中国中部まで分布する。花序の毛の色でいくつかの園芸品種が作出されている。心材は硬く黄色で,器具の製作や古くからの黄櫨染(こうろぜん)の原料に利用された。葉や樹皮はタンニン原料や薬用にされる。
執筆者:初島 住彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報