改訂新版 世界大百科事典 「バシクルモン」の意味・わかりやすい解説
バシクルモン
Trachomitum venetum(L.) Woodson var.basikurumon Hara(=Apocynum venetum L.var.basikurumon (Hara) Hara)
キョウチクトウ科の多年草。北海道南西部,本州北部の日本海に面した海岸の岩場に見られる。和名はこの植物のアイヌ名からとる。北海道の小樽に近い忍路(おしよろ)海岸の周辺にあるので,オショロソウの別名がある。高さ40~80cmに達し,全株粉白色をおびる。葉は主茎では互生であるが,枝では対生して,長楕円状卵形または楕円形,先端は円形または鈍形,基部は広いくさび形で短柄がある。長さ2~5cm,ふちには硬突起を疎生する。花期は夏。円錐花序は頂生し,紫紅色の小さい花を開く。花冠は狭い鐘形,長さ6~7.5mm,両面に細毛状の突起があり,中部まで5裂し,裂片は楕円形。果実は袋果で,二またに分かれた細長い莢(さや)状である。
基本変種のT.venetum(英名dogbane)はヨーロッパから中国まで分布し,キマリンcymarinやストロファンチディンstrophanthidinを含有し,降血圧,強心作用があり,薬用にされる。また茎から採取される繊維は,漁網などに用いる。
執筆者:初島 住彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報