バシル(英語表記)Bashir, Omar al-

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バシル」の意味・わかりやすい解説

バシル
Bashir, Omar al-

[生]1944.1.7. ホシュワドゥバンナガ
スーダン軍人,政治家。大統領(在任 1993~2019)。フルネーム Omar Hassan Ahmad al-Bashir。農家に生まれ,ハルツームで中等教育を受けたのち,スーダン国軍に入隊した。エジプトのカイロ士官学校に学び,帰国後は国軍内でたちまち昇進し,1980年代半ばに南部の反政府勢力スーダン人民解放軍 SPLAに対する国軍の作戦を先導した。1989年にクーデターを起こして民選政権を倒し,国の統治機関となる救国革命指導評議会議長に就任。議会を解散し,政党活動を禁止したほか,報道を厳しく制限した。1993年10月に大統領に就任。1996年の大統領選挙再選。2003年8月,西部ダルフル地方で非アラブ系黒人勢力がバシル政権に対して反乱を起こすと,バシルはアラブ系民兵組織,通称ジャンジャウィードの力を借りてこれを鎮圧した。ジャンジャウィードは残虐な手段を用いて地域の人々を恐怖にさらし,現地で枯渇する食料や医療品の国際救援活動機関による補給を妨げ,200万人以上が家を追われた。ダルフル紛争が激化するなか,国際社会はバシルを厳しく非難,2008年7月に国際刑事裁判所 ICCの主任検察官がバシルに対し,ダルフル地方における人道に対する罪戦争犯罪ジェノサイド容疑逮捕状を請求した。スーダン政府は容疑を否定しバシルの無実を主張したが,2009年3月,ICCは戦争犯罪と人道に対する罪の容疑で逮捕状を発行,現職の国家元首に対する初の事例となった。2010年と 2015年の大統領選挙で再選されたが,2019年4月,反政府デモに端を発する軍事クーデターにより失脚した。

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