日本大百科全書(ニッポニカ) 「バレーボールの用語」の意味・わかりやすい解説
バレーボールの用語
ばれーぼーるのようご
エース ace
主力攻撃者のこと。大砲ともいう。近代バレーは、一つのチームに大砲型と機関銃型の2種類のスパイカーをもつことが多い。エースは、相手のブロッキングやレシーブに真正面からぶつけて得点する、得点源となる主力スパイカー。
オープン攻撃 open attack
ネットの中央からでなく、両サイドのアンテナ近くから高くトスされたボールを相手コートにスパイクする戦法。
回転レシーブ rolling reception
オリンピック東京大会の女子チームの監督であった大松博文(だいまつひろぶみ)(1921―1978)が考案したレシーブ法で、ボールをレシーブしたあとコート上で1回転するため、すぐに起き上がって次のプレーに移れるのが特徴。
キャッチ・ボール catch ball
ボールをつかんだり、投げたりするプレーで、反則になる。6人制ではヘルド・ボールともよばれ、9人制ではホールディングとよばれている。
クイック攻撃 quick attack
速攻ともいう。Aクイックはセッターからの低く短いトスを、先にジャンプしているスパイカーがネットの上端すれすれから打ち込む攻撃法。セッターとスパイカーの距離は約1メートル以内で、バックトスで行うとCクイック。Bクイックは日本男子チームがオリンピック・メキシコ大会前に開発した攻撃法で、セッターとスパイカーの距離が約3メートル離れ、スパイカーがセッターのトスにあわせて飛び、低く流れるようなトスをすばやく打ち込む。バックトスで行うとDクイックになる。
サーブ serve
6人制では、バック・ライト(後衛右)に位置する選手が、エンド・ラインの後方から片方の手または腕を用いて、ボールをネット越しに相手コート内に打ち込んでボールをインプレーの状態にすることをいう。9人制では、あらかじめ決められた順番で打つ。主審のサーブ許可の吹笛後8秒以内に打たねばならず、やり直しは認められない。
サブスティチューション substitution
守備力や攻撃力を高めるため、コート内の選手とベンチにいる選手を交代させること。6人制、9人制ともに1セットに6回、2人以上でも同時に交代できる。交代された選手は1セットに一度だけ、自分と交代した選手とのみ交代してコート内に戻ることができる。ただしリベロ選手はこの制限に関係がなく交代できる。
時間差攻撃
セッターと2人のスパイカーが組んで行うトリック攻撃。最初のスパイカーがクイック攻撃の早いジャンプで相手ブロッカーを引き付けておき、その相手ブロッカーがジャンプして降りた瞬間に、次のスパイカーが実際に打ち込むという、相手ブロッカーのマークを外す攻撃法。
スクリーン screen
サーブを打つ選手やサーブのコースを1人または集団で相手に見えないように壁をつくって妨害する反則。自チームの選手が、腕を振り動かしたり、跳びはねたり、左右に動いたり、あるいは集団で固まってサーブのコースを隠したりすること。
スパイク spike
ネット近くから相手チームが守りきれないような強いボールを打ち込んで得点しようとすること。スパイクのみでなく相手コートの守備が手薄なところへ弱いボールを落としたり(フェイント)、左右のコースや遅速のタイミングを変えて相手の守りを崩すことの総称をアタックattackという。
セッター setter
アタッカーに対し打ちやすいボールをネット際に送って味方の攻撃をリードする役割をもつ選手のこと。だれをどのように使ってゲームを進めるかを判断しなければならないので、チームの戦法を決める司令塔ともいうべきたいせつな役割をもっている。
ダブル・コンタクト double contact
1人の選手が2回連続でボールに触れる反則をさす。ただし、チームの1回目の接触は、一つの動作中であれば身体の種々の部分に連続してボールに触れても反則にはならない。また、ブロッキングの場合、同じ選手が2回連続してボールに触れることができる。9人制ではボールがネットに触れた場合、同じ選手がふたたび続いてボールに触れても反則とならない。なお、9人制ではドリブルとよばれる。
チャレンジシステム challenge system
審判が下した判定に対して、チーム監督またはキャプテンがビデオによるリプレイ検証を申し出ることができるシステムのこと。1チームにつき、各セット内で2回まで申告可能だが、成功すれば回数は減らない。2012年のオリンピック・ロンドン大会後に試験的に導入され、2014年のバレーボール世界選手権より公認国際大会に正式導入された。
テクニカル・タイム・アウト technical time out
国際バレーボール連盟主催の国際大会やオリンピック大会で適用される、特別なタイム・アウト。略称はTTO。第1セットから第4セットにおいて、どちらかのチームが8点、または16点に達したときに、自動的にとられるタイム・アウトをさす。時間は60秒。第5セットにはない。
トス toss
アタッカーに攻撃させる目的で、オーバーハンド、組手または片手を用いてネット際にボールを送ることをいう。相手コートからきた最初のボールをトスする選手に送ることをパスpassという。
フォア・ヒット four hit
チームが規定回数をこえてボールに触れる反則。6人制の場合、1チームは3回以内のプレーで相手コートに返球しなければならない。ただし、ブロッキングでの接触は、3回の打球に数えない。9人制ではオーバー・タイムズとよばれる。また、9人制の場合は、ブロッキングも1回のボール・タッチに数えるが、ボールがネットに触れたときはもう1回プレーすることができる。したがって、1チーム最大で4回までボールに触れることができる。
フライング・レシーブ flying reception
日本男子チームがオリンピック・メキシコ大会前に編み出したレシーブ法。水泳のダイビングのように遠くのボールに飛び込んでレシーブするもので、守備範囲が広くなる。
ブロック block
フォワード(前衛)の選手がネット際の、ネットの上端より高い位置で相手コートからくるボールを阻止すること。6人制では、相手のプレーを妨害しない限り、相手の攻撃動作の後にネット越しに相手コート上のボールに触れても反則にならない。コートの内側を守るセンタープレーヤーをミドルブロッカーという。
ペネトレーション・フォールト penetration fault
相手コート上にあるボールを相手がアタックする前にネットを越えて触れるオーバーネットと、プレーヤーがセンター・ラインを踏み越すパッシング・ザ・センターラインによる反則。ただし、ブロッキングのときは、ネットを越えて両手や両腕を出すことができる。9人制の場合は、相手空間内にあるボールに触れることすべてがオーバーネットの反則になる。
ポジショナル・フォールト positional fault
サーブが打たれた瞬間に、サーバーを除くほかの選手がコート内の前後・左右の正しい位置にいなかったことでおこる反則。選手のポジションは、コートに接している足の位置で決まる。また、ラリー中にバックの選手がアタック・ラインを踏むか、フロント・ゾーン内で踏み切ってジャンプし、ネット上端より高い位置からボールを相手コートに返球するのも反則になる。6人制のみの反則で、9人制の場合、選手はコートの内外を問わず、ボジションは任意である。
リバウンド戦法 rebound play
スパイク攻撃をする際、相手のブロッキングが完全にそろってブロックされそうだとみたら、そのブロッキングに軽くボールを当てて、ふたたび味方のコートにボールを取り返し、改めて攻撃チャンスを生み出す戦法。また、わざとブロックに当ててコート外にたたき出すことをブロックアウト戦法という。
リベロ libero player
守備専門のバック・プレーヤー。そのため攻撃的な動作を行うとすべて反則になる。コート内、フリー・ゾーンのどこからもネットより高い位置のボールを返球できず、スパイク、ブロッキング、サーブも禁止。また、アタック・ラインより前方でオーバーハンドでトスすることも反則になる。交代は何度でもどのバック・プレーヤーともできる。1チームにつき、2人のリベロを登録できる。リベロ役の選手は、ほかの選手とは対照的な色のユニフォームを着なくてはならない。6人制のみのルールで、9人制では用いられない。
ローテーション rotation
6人制でレシービングチームが得点をあげ、サーブ権が自チームに移るごとに選手が時計の針が回る方向に一つずつ位置を移動することをいう。サーブが打たれるまでは、サーバー以外の両チームの選手はコート内での前後および左右のお互いの位置を守らないとペネトレーション・フォールトの反則になる。