ブロッキング(読み)ぶろっきんぐ(英語表記)blocking

翻訳|blocking

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブロッキング」の意味・わかりやすい解説

ブロッキング(作業)
ぶろっきんぐ
blocking

連続的で反復的な作業の場合に、作業が一時的に中断したり遅延したりする現象ブロッキングとよんでいる。熟練したタイピストたちの優れた規則的活動でも精密に記録し計測すると、いくつかの反応の束があり、適当な「間」があることがわかる。実験的に色名呼称作業や一桁(けた)の加算作業のようなほぼ等質の作業を行わせて各反応時間を測定すると、比較的短い反応時間が続いて現れるなかに長い反応時間がときどき現れる。

 アメリカの心理学者ビルズA. G. Billsは、ブロッキング発生の周期性、休息によって減少することなどから、ブロッキングは周期的におこる神経機能の不応期によるものであり、休息の機能をもつとした(1931)。しかしブロッキング現象のなかにはかならずしも周期性を示さないものもあることが指摘されている。望月享子は、ブロッキングは、作業経過における不可欠な変化として、規則的調節を補うために生じるとともに、課題の効果的達成のために生じるとした(1985)。

 内田クレペリン精神作業検査におけるV字型の落ち込みをブロッキングとみることもある。戸川行男らは、内田クレペリン精神作業検査において大きなV字型の落ち込みを示す人はビルズらのブロッキングを多発する傾向があることを指摘している(1973)。産業場面で疲労の測定法として、連続色名呼称法を用いることがあるが、ブロッキングが疲労の指標として用いられている。

[上田雅夫]

『戸川行男監修、清原健司・上田雅夫編『精神作業検査要覧』(1973・実務教育出版)』『望月享子著『作業経過の心理学』(1985・東海大学出版会)』


ブロッキング(天気)
ぶろっきんぐ
blocking

天気図解析や天気予報上の用語。中緯度帯では移動性の高気圧低気圧の運動は、北向きまたは南向きの進行成分をもちながらも、おおむね西から東に向かうのが通常の状態である。これは、これらの気圧系を形成、維持する「仕組み」(主として偏西風波動)が、偏西風の流れの中を東進するためである。ところが、ときおり、広い範囲にわたって、数日間またはそれ以上も、高気圧や低気圧の東向きの運動が停滞したり、逆行したりすることがある。この現象をブロッキングという。英語のブロックには妨害阻止、行動妨害(スポーツで)などの意味があり、前記のような高気圧や低気圧の正常な進行が妨げられる現象にも、このことばが用いられていて、気象用語になった。ブロッキングがおきているときは、上空の偏西風波動は著しく振幅を増して大きく南北に蛇行し、典型的な場合には北側に切離高気圧、南側に切離低気圧が形成されている。このときにできる停滞性の背の高い高気圧をブロッキング高気圧という。梅雨期などに現れる停滞性のオホーツク(海)高気圧はブロッキング高気圧のことが多い。ブロッキングは偏西風波動の不安定化という、大気大循環の一つの型式であり、これにより高緯度と低緯度の間で大気が熱とともに大きく交換される。これがおこると広範囲に寒波、熱波、干魃(かんばつ)、長雨などの異常天候が現れやすい。

[倉嶋 厚]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ブロッキング」の意味・わかりやすい解説

ブロッキング
blocking

心理学用語。阻止現象。連続加算作業や色名呼称など等質的,連続的な作業において,短時間ではあるが一時的な作業の中断がリズム的に繰返されること。疲労心的飽和などによる。

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