日本大百科全書(ニッポニカ) 「パラ化合物」の意味・わかりやすい解説
パラ化合物
ぱらかごうぶつ
para-compound
「パラ」はギリシア語で「反対側」を意味する。この「パラ」という語を用いた化合物には、以下のようなものがある。
(1)ベンゼンの二置換体で2個の置換基(XとY)がベンゼン環のちょうど反対側の1と4の位置にある化合物をいう。
p(パラ)-ジクロロベンゼン、p-クロロニトロベンゼンのように、お互いパラの位置にある置換基名を骨格名「ベンゼン」につけて命名する場合のほかに、p-ニトロフェノールのように一置換ベンゼンの慣用名に第二の置換基名をつけて命名する場合や、p-キシレンのように二置換ベンゼンの慣用名(「キシレン」は「ジメチルベンゼン」の別名)につけて置換基の位置を示すのに用いる場合がある。
(2)「パラ」という接頭語は、このほかにパラホルムアルデヒド(ホルムアルデヒドの多量体HOCH2O(CH2O)nCH2OHを示す)、パラアルデヒド(アセトアルデヒドの環状三量体を示す)、パラタングステン酸塩(5M2O・12WO3・nH2Oの組成)などのように用いられるが、その定義はかならずしも明確でない。
(3)水素分子H2を構成する二つのHの核スピンが逆向きで合成核スピンが0になるものを「パラ水素」という。スピンが同じ向きのものは「オルト水素」である。
[廣田 穰 2015年3月19日]