C6H4Cl2(147.00).o-,m-,p-ジクロロベンゼンの3種類の異性体がある.
(1)o-ジクロロベンゼン:ベンゼンを鉄触媒の存在下に塩素化するとモノクロロベンゼンを経て,p-およびo-ジクロロベンゼンが約2:1の比で生成する.両者を分けるには混合物を冷却してp-ジクロロベンゼンを結晶として析出させ,残りの粗o-ジクロロベンゼンは蒸留と結晶化により精製する.o-クロロアニリンのザントマイヤー反応によっても得られる.無色透明の芳香性液体.融点-17.5 ℃,沸点180.5 ℃.1.3048.1.5515.λmax 250,255,263,270,277 nm(log ε 1.98,2.13,2.34,2.44,2.37).リグロイン,四塩化炭素,アセトンに易溶,エタノール,エーテルに可溶,水に不溶.殺虫剤,消毒剤,伝導用熱媒体,有機溶媒として用いられる.LD50 500 mg/kg(ラット,経口).
(2)m-ジクロロベンゼン:m-クロロアニリンのザントマイヤー反応,あるいはm-ジニトロベンゼンに高温で乾燥塩素を作用させて合成される.凝固点-24.4 ℃,沸点172 ℃.1.2881.1.546.λmax 250,256,263,270,278 nm(log ε 1.90,2.15,2.40,2.52,2.43).溶解性は,o-ジクロロベンゼンに似ている.農薬,染料,顔料,医薬品の合成中間体.
(3)p-ジクロロベンゼン:合成法は前述のとおり.板状晶.融点53 ℃,沸点174 ℃.1.4581.1.5285.昇華性がある.アセトン,エタノールに易溶,ほかの有機溶媒に可溶,水に不溶.λmax 258,266,273,280 nm(log ε 2.24,2.46,2.60,2.51).衣料用殺虫剤,染料中間体の合成に用いられる.皮膚から吸収され刺激も強い.LD50 500 mg/kg(ラット,経口).
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
ベンゼンの塩素置換体の一つ。その位置によりo(オルト)-、m(メタ)-、p(パラ)-ジクロロベンゼンの3種の異性体がある。o-、m-体は無色液体、p-体は無色固体。塩素によりベンゼンまたはクロロベンゼンを塩素化して得た3種の異性体の混合物を結晶化、蒸留することにより、各異性体が分離、精製される。用いる触媒の種類、温度などの反応条件により異性体の生成比は異なる。いずれも水には溶けず、エタノール、エーテルに溶ける。o-ジクロロベンゼンは染料の原料として、また種々の用途をもつ溶剤として用いられる。p-ジクロロベンゼンはもっとも多く用いられる衣類の防虫剤である。
[谷利陸平]
ジクロロベンゼン
分子式 C6H4Cl2
分子量 147.0
o-ジクロロベンゼン
融点 -17.03℃
沸点 180.48℃
比重 1.3059(測定温度20℃)
m-ジクロロベンゼン
融点 -24.76℃
沸点 173.00℃
比重 1.2884(測定温度20℃)
p-ジクロロベンゼン
融点 54℃
沸点 174.12℃
比重 -(測定温度20℃)
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…普通はベンゼンの水素原子を1個だけ塩素原子で置きかえた形の,分子式C6H5Clで表される化合物をいう。広義には,ベンゼンの水素原子を1~6個の塩素原子で置きかえた形の化合物の総称として用いられ,この場合には塩素原子の数によりモノクロロベンゼンC6H5Cl,ジクロロベンゼンC6H4Cl2などと呼ぶ。すべて触媒を用いベンゼンと塩素とを反応させて合成される。…
※「ジクロロベンゼン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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