改訂新版 世界大百科事典 「パースペクティビズム」の意味・わかりやすい解説
パースペクティビズム
perspectivism
遠近法に従った絵画において,描かれる風景はつねに画家の視点に相関的であるが,それと同様に世界はつねに特定の視点から特定の見方によってしか見られえないものであり,いかなる視点にも限定されない絶対的な世界認識などはありえないという考え方。〈遠近法主義〉と訳される。18世紀初頭にライプニッツが〈単子論〉を説き,すべての単子(モナド)はそれぞれの視点から,それぞれの表象能力に応じて全世界をおのれのうちに映し出すと主張した。1880年代にニーチェが,すべての存在者の根本性格を〈力への意志〉と見るその最後期の思想においてこの考えを受けつぎ,認識とはけっして客観的な真理の把握などではなく,〈力への意志〉を本質として不断に生成しつつある存在者が,その到達した現段階を確保せんがために,それぞれの力の段階に応じて遠近法的に世界を見る見方にすぎないと主張した。この考えは,20世紀スペインの哲学者オルテガ・イ・ガセットにも受けつがれる。彼はユクスキュルの生物学的〈環境〉概念を哲学的にとらえなおし,すべての実在はそれぞれの生に相関的なものとして遠近法的にしか存在しないと主張する。
→遠近法
執筆者:木田 元
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報