改訂新版 世界大百科事典 「ヒカヤットアチェ」の意味・わかりやすい解説
ヒカヤット・アチェ
Hikayat Aceh
インドネシア,スマトラ島北端のアチェにおいて,スルタン・イスカンダル・ムダの時代(1607-36)に編まれた年代記。インド洋とマラッカ海峡の接点に位置するアチェは,当時イスラム商人による東西貿易の一大中継港として,その黄金時代を迎えていた。年代記の著者は特定されていないが,西欧人による旅行記や報告書に対して,数少ないマレー語による記録であることから,アチェに限らずマレー世界の歴史と文化を知るうえでの貴重な史料とされている。年代記は,(1)ラムリ王家と天女の神秘的な話,(2)アチェの王の年代記,(3)ジョハン・アラム(スルタン・イスカンダル・ムダ)の父母の結婚と,ジョハン・アラムの誕生,成長にまつわる奇跡やエピソード,(4)ジョハン・アラムをたたえ,さらにジョハン・アラムがアチェの王位の後継者として推戴される話,から構成されている。
執筆者:白石 さや
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報