日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒメスミクイウオ」の意味・わかりやすい解説
ヒメスミクイウオ
ひめすみくいうお / 姫炭食魚
sharptooth seabass
[学] Parascombrops philippinensis
硬骨魚綱スズキ目ホタルジャコ科に属する海水魚。神奈川県三崎(みさき)付近から九州南岸にかけての太平洋側、対馬(つしま)海域から東シナ海の日本海側、および済州島(さいしゅうとう)、台湾、フィリピン、ベトナム、インドネシアなど西太平洋からインド洋に広く分布する。体は細長く側扁(そくへん)する。目は大きくて、吻長(ふんちょう)の1.5倍。口は大きく、上顎(じょうがく)の後端は目の中央部下付近に達する。上下両顎(りょうがく)の前端に上顎には2対(つい)、下顎には1対の犬歯がある。また下顎の側方にも5~7本の強い犬歯がある。前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の縁辺は鋸歯(きょし)状。主鰓蓋骨には2本の扁平な弱い棘(きょく)がある。鱗(うろこ)は大きくて薄い円鱗(えんりん)で、きわめてはがれやすい。側線有孔鱗数は28~32枚。背びれは2基で、第1背びれは9棘、第2背びれは1棘9軟条からなる。臀(しり)びれは2棘7軟条。第1背びれと臀びれの第2棘の前縁は円滑。胸びれは16軟条。腹びれ棘の前縁は鋸歯状。尾びれは深く二叉(にさ)する。体色は暗褐色で、腹側面は銀白色。口内、鰓腔(さいこう)(えらが入っている空所)内は黒くない。体長は約10センチメートルにしかならない小形種で、1年ほどで成熟する。水深30~300メートルの大陸棚に生息し、コペポーダ類、オキアミ類、カニ類、イカ類、魚類などを食べる。底引網で混獲される。市場価値は低いが、タチウオなど他の有用魚の餌(え)生物になる。
2017年、本種はスミクイウオ属Synagropsからヒメスミクイウオ属Parascombropsに変更された。ツマリヒメスミクイウオP. serratospinosusやノコバスミクイウオP. mochizukiiに似るが、本種は第2背びれの前縁が鋸歯状でないことで他の2種と区別できる。またバケスミクイウオでは臀びれ棘が3本であることなどで、本種と区別できる。
[尼岡邦夫 2023年4月20日]