改訂新版 世界大百科事典 「ヒメリンゴ」の意味・わかりやすい解説
ヒメリンゴ
Chinese crab apple
Malus prunifolia (Willd.) Borkh.
カイドウに似たバラ科の落葉小高木。幹は高さ10mほどになり,若い枝や葉には軟毛がある。花は春,短枝に数花が散房状につき,5弁で,つぼみは紅色,開花すると白色になり,径3.5~5cmほど,花径とほぼ等長の有毛の花梗を有する。果実は球形で,径2~2.5cmと名まえのように小さく,先端部はリンゴのようにへこむことがない。イヌリンゴとも呼ばれる。中国大陸原産で,日本では盆栽などに利用されるが,耐寒性は強く,シベリアでの耐寒性リンゴの品種育成の交配親に用いられた。
エゾノコリンゴM.baccata Borkh.var.mandshurica (Maxim.) Schneid.(英名Manchurian crab apple)も小さな赤熟する球形の果実をつけ,本州中部以北,東北アジアからヒマラヤにかけて広く分布する小高木。ときにヒメリンゴと称されることがある。リンゴの接木台に利用され,また花木として植栽される。
ヨーロッパでは,ヒメリンゴやズミのように小さな球形の果実をつけるリンゴ属植物,とくにセイヨウリンゴの野生種M.pumila Mill.やエゾノコリンゴ類M.baccata Borkh.をクラブ・アップルcrab appleと総称的に呼び,花木として利用が盛んである。多くの園芸種間雑種も育成されている。
執筆者:堀田 満
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報