ヒラハコケムシ(読み)ひらはこけむし

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒラハコケムシ」の意味・わかりやすい解説

ヒラハコケムシ
ひらはこけむし / 平葉苔虫
[学] Membranipora serrilamella

触手動物門苔虫(こけむし)綱唇口(しんこう)目アミメコケムシ科の海産小動物。個虫とよばれる体長0.5ミリメートルほどの動物体が無性的に出芽し、海藻の上を平らに覆う群体をつくる。日本各地の沿岸で、コンブカジメなどの大形褐藻に付着し、直径30センチメートルを超えるほどに成長する。個虫は白色石灰質でできた長方体の虫室と、その中に収まった虫体とよばれる軟体部からなる。虫室の腹面は石灰化せずキチン質の表膜に覆われているので、中の虫体が透けてみえる。表膜の前方端近くに三日月形の口が開き、そこから17本前後の触手を出して餌(えさ)をとる。キフォナウテスとよばれる特異な幼生をもつ。この幼生は2枚の殻と完全な消化管を備え、長期にわたって浮遊生活を送る。北海道の内浦湾では、1970年(昭和45)以来毎年のように養殖コンブ上に群体が付着し、損害を与えている。

 近縁種には、北アメリカ沿岸にまで分布し、やはり大形群体をつくるキタアミコケムシMembranipora membranaceaや、ホンダワラなどの流れ藻の上に小形群体をつくるM. tuberculataなどがいる。

[馬渡峻輔]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヒラハコケムシ」の意味・わかりやすい解説

ヒラハコケムシ
Membranipora serrilamella

触手動物門苔虫綱唇口目アミメコケムシ科。海藻の上に乳白色で薄い円形の群体をつくる。個虫は六角形または長方形で体壁が薄く,レース状群体に広がって直径数十 cmにもなる。内部の構造がよく透けて見え,ときに黄赤色の卵が充満する。コンブやスジメなどの褐藻類に付着し,しばしばコンブ養殖に大きな害を与える。幼生はキフォナウテスといい,数週間遊泳生活をしたあと着生生活に入る。日本各地のほか,アメリカ太平洋岸やブラジルにも分布する。近縁種にキタアミコケムシ M.membranaceaやサメハダコケムシ M.tuberculataなどがある。

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世界大百科事典(旧版)内のヒラハコケムシの言及

【コケムシ(苔虫)】より

…フサコケムシBugula neritina,チゴケムシDakaria subovoideaなどは船底について船速を遅くさせたり,冷却水路を狭めるなどの害を与え,またホンダワラコケムシZoobotryon pellucidumやセンナリコケムシBowerbankia imbricataは定置網の水通しを悪くしたり,養殖貝を殺すこともある。ヒラハコケムシMembranipora serrilamellaは有用海藻について品質を低下させ,大きな被害を与えている。 コケムシ類の化石は古生代のオルドビス紀の初期から知られており,現生種が約5000種に対し,化石種は1万5000種あるといわれている。…

※「ヒラハコケムシ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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