ビテーズ(読み)びてーず(英語表記)Antoine Vitez

改訂新版 世界大百科事典 「ビテーズ」の意味・わかりやすい解説

ビテーズ
Antoine Vitez
生没年:1930-90

フランスの俳優,演出家。コンセルバトアール教授。はじめパリ東洋語学校のロシア語科に学び,ロシア語,ドイツ語,ギリシア語の戯曲翻訳するようになった。ロシア生れの名女優タニア・バラショワの塾で演技を学び,マルセイユの〈日常劇団〉(1962-63),カーンの文化会館付属劇団(1964-67)に俳優として参加するかたわら,小説家・詩人のL.アラゴンの秘書(1960-62)も務めた。1972年以後はパリ郊外イブリのカルティエ劇場,81年以後はシャイヨー国立劇場支配人として,古典劇(ラシーヌ,モリエール),現代古典(B.ブレヒト,P.クローデル),フランス現代作家(グザビエ・ポムレ,ルネ・カリスキー)など幅広いレパートリーを上演している。彼の演出は,何よりも台本解釈と俳優の演技を根幹に据え,装置や照明などは二義的に扱う点でジャンセニスト的禁欲さに貫かれており,どの舞台もつねに独自の視点から新しい読解が行われる。俳優学校教師としては,独特の指導による教育法を定着させて幾多の俊才を生み,〈ビテーズ方式〉という語まで生まれたほどである。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビテーズ」の意味・わかりやすい解説

ビテーズ
びてーず
Antoine Vitez
(1930―1990)

フランスの演出家、俳優、翻訳家。パリに生まれる。東洋語学校ロシア語科に学ぶ。多彩な語学の才能を示し、ロシア語、ギリシア語、ドイツ語、英語などの戯曲を翻訳。1962~67年、俳優としてマルセイユやカーンの劇団に参加。その後演出家として、67年のマヤコフスキー作『風呂場』、70年のレンツ作『家庭教師』、71年のソフォクレス作『エレクトラ』、72年のゲーテ作『ファウスト』、80年の『モリエール四部作』など、多彩な演目に独自な解釈による新演出を行った。81年以後シャイヨー国立劇場座長を務め1968年以来コンセルバトアールで俳優教育を実践し、「ビテーズ方式」と評価されていた。

[利光哲夫

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

部分連合

与野党が協議して、政策ごとに野党が特定の法案成立などで協力すること。パーシャル連合。[補説]閣僚は出さないが与党としてふるまう閣外協力より、与党への協力度は低い。...

部分連合の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android