改訂新版 世界大百科事典 「ピエトラドゥーラ」の意味・わかりやすい解説
ピエトラ・ドゥーラ
pietra dura[イタリア]
硬い石の意で,宝石やメノウ,カルセドニー,ジャスパー,ラピスラズリなどの貴石およびその細工品を指す。複数形のピエトレ・ドゥーレpietre dureは数種の宝石・貴石を組み合わせた細工品を指す。イタリア以外のヨーロッパ諸国では誤って単数形で,いろいろな種類の宝石・貴石の細片を一定の意匠に従って組み合わせたパネルのことを意味する場合もある。
印章,装身具,装飾小箱などが古くからこれらの貴石から作られた。このような硬質の石を加工する技術は,古代ローマの帝政時代に最高水準に達したが(彫玉),中世期には衰微し,ルネサンス期に入ってとくにミラノやフィレンツェで再び隆盛になった。フィレンツェではコジモ・デ・メディチがピエトラ・ドゥーラの生産を推進させるために,プラハのルドルフ2世の宮廷宝石師として活躍したミラノ出身のジロラモおよびガスパロのミゼローニ兄弟を招いた。ついでフランチェスコ1世もミラノの工匠たちをフィレンツェに招いて,1588年ピエトラ・ドゥーラ製作所を設立し,豪華な花瓶や水指などを作った。またメディチ家の室内と家具の装飾用のパネルをはじめ,花鳥山水のモティーフをとりいれたピエトラ・ドゥーラの飾板を一般需要のために生産した。とくに後者は〈フィレンツェ・モザイク〉と名づけられ,西欧諸国で人気を博し広く愛用された。
執筆者:鍵和田 務
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報