ピジョン輝石(読み)ピジョンきせき(その他表記)pigeonite

改訂新版 世界大百科事典 「ピジョン輝石」の意味・わかりやすい解説

ピジョン輝石 (ピジョンきせき)
pigeonite

Caに乏しい単斜輝石の一種。化学組成は(Mg,Fe2⁺,Ca)(Mg,Fe2⁺)Si2O6で,Ca/(Mg+Fe+Ca)が0.5~0.15の範囲のものを指す。褐色,緑褐色,黒色の短柱状~粒状結晶。単斜晶系。モース硬度6。比重3.17~3.46。へき開が{110}{110}に顕著で,両者は約87度で交わる。多くはソレアイト質系列安山岩,玄武岩,デイサイトなど比較的急冷した火成岩の石基に,またまれに斑晶として出現する。Caに乏しい単斜輝石は低温では不安定なため,斑レイ岩など粗粒で徐冷した岩石中では分解してしまう。その結果,斜方輝石中にCaに富む単斜輝石(オージャイトフェロオージャイト)を一定の面(もとのピジョン輝石の{001}面)に沿って離溶する。これは〈転移したピジョン輝石inverted pigeonite〉と呼ばれる。隕石の一種であるエコンドライトにはしばしば含まれ,とくにエコンドライトの一種であるユークライトでは最も主要な構成鉱物である。名は産地のアメリカ,ミネソタ州ピジョン岬にちなむ。
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世界大百科事典(旧版)内のピジョン輝石の言及

【輝石】より

…それらを特にファッサイトfassaiteと呼ぶことがある。ピジョン輝石pigeoniteは火山岩の石基にはしばしば出現するが,斑晶としてはまれである。ピジョン輝石は比較的高温でのみ安定であり,低温では斜方輝石とオージャイトとが安定である。…

【輝石】より

…それらを特にファッサイトfassaiteと呼ぶことがある。ピジョン輝石pigeoniteは火山岩の石基にはしばしば出現するが,斑晶としてはまれである。ピジョン輝石は比較的高温でのみ安定であり,低温では斜方輝石とオージャイトとが安定である。…

※「ピジョン輝石」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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