日本大百科全書(ニッポニカ) 「シノ石」の意味・わかりやすい解説
シノ石
しのせき
sinoite
ケイ素の窒酸化物。分類上は窒化物に入れられる。同系鉱物なし。自然ケイ素silicon(化学式Si)を除いて、シノ石はもっともケイ素に富む鉱物である。シノ石のケイ素56.07%は石英のケイ素46.02%をはるかに上回る。最初にこの鉱物を分析した隕石(いんせき)鉱物のある権威は、石英よりケイ素に富んだ鉱物はないとして、前述の分析値が誤りであろうと判断したため、これを新鉱物として記載する機会を逃してしまったという有名な挿話がある。
自形未報告。ただし一方向に伸びたものがあることは確実。球顆隕石(きゅうかいんせき)中の頑火輝石(がんかきせき)中の包有物として産する。隕石中以外の産出は知られていない。日本に落下した隕石中からは知られていない。共存鉱物は頑火輝石、ピジョン輝石pigeonite((Mg,Fe,Ca)2Si2O6)、ニッケル鉄、トロイリ鉱、斜長石、ドーブレー鉱daubréelite(FeCr2S4)、オルダム鉱、閃(せん)マンガン鉱、石墨、鱗珪石(りんけいせき)など。命名は化学組成Si2N2Oの元素記号による。
[加藤 昭]