ピリピ人への手紙(読み)ピリピびとへのてがみ(その他表記)Letter of Paul to the Philippians

改訂新版 世界大百科事典 「ピリピ人への手紙」の意味・わかりやすい解説

ピリピ人への手紙 (ピリピびとへのてがみ)
Letter of Paul to the Philippians

パウロが,第2伝道旅行に際して建てたピリピフィリッピ)の教会にあてて書いた手紙。第3章以外は第3伝道旅行のときエペソ(エフェソス)で獄中にあって書いたと思われる。この手紙で彼は主としてキリスト者の生の喜びを説いている。また,獄中の自分を取り巻く状況,とくに入獄によって福音がいっそう人々に伝えられるに至ったことを報告し,相手方にも信仰守り,謙虚に生きることを勧める。全体を通して,彼と教会との温かい関係がただよっている。ただし,ユダヤ主義的キリスト教伝道者への警戒を呼びかける第3章は,論調前後とまったくちがう。元来複数であった手紙が,後に合成されて今日の形となった可能性が大きいと考えられる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ピリピ人への手紙」の意味・わかりやすい解説

ピリピ人への手紙
ピリピびとへのてがみ
Pros Philippēsious; The Letter to the Philippians

ピリピ書』ともいう。新約聖書中の一書,ピリピ人の教会にあてたパウロの獄中書簡マケドニアのピリピはヨーロッパにおいてパウロが教会を建設した最初の町で,パウロは特にこの町のキリスト教徒親近感をもち,「おのれをむなしうして僕 (しもべ) のかたちをとり人間の姿となり」 (2・7) ,「十字架の死にいたるまで従順であった」 (8章) キリストへの信仰を彼らとともに喜び,ともに福音にあずかっていることを感謝しつつ,一つの心となって福音信仰のために戦うように説いている。獄中書簡であるにもかかわらず信仰による義への確信が一層強く,キリストの再臨とみずから復活を願う信仰の喜びにあふれているところから『喜びの書簡』と呼ばれる。

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世界大百科事典(旧版)内のピリピ人への手紙の言及

【パウロ】より

…ギリシア語ではパウロスPaulos。
[資料]
 新約聖書中に彼の書いたとされる手紙が13収められているが,そのうち確実に彼のものと思われるものは,《ローマ人への手紙》,《コリント人への手紙》(第1,第2),《ガラテヤ人への手紙》,《ピリピ人への手紙》,《テサロニケ人への手紙》(第1),および《ピレモンへの手紙》の合計7である。《使徒行伝》の後半はパウロを中心にして書かれているが,必ずしも客観性を志した叙述ではない。…

※「ピリピ人への手紙」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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