改訂新版 世界大百科事典 「ピリピ人への手紙」の意味・わかりやすい解説
ピリピ人への手紙 (ピリピびとへのてがみ)
Letter of Paul to the Philippians
パウロが,第2伝道旅行に際して建てたピリピ(フィリッピ)の教会にあてて書いた手紙。第3章以外は第3伝道旅行のときエペソ(エフェソス)で獄中にあって書いたと思われる。この手紙で彼は主としてキリスト者の生の喜びを説いている。また,獄中の自分を取り巻く状況,とくに入獄によって福音がいっそう人々に伝えられるに至ったことを報告し,相手方にも信仰を守り,謙虚に生きることを勧める。全体を通して,彼と教会との温かい関係がただよっている。ただし,ユダヤ主義的キリスト教伝道者への警戒を呼びかける第3章は,論調が前後とまったくちがう。元来複数であった手紙が,後に合成されて今日の形となった可能性が大きいと考えられる。
執筆者:佐竹 明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報