ファント・ホッフ係数(読み)ふぁんとほっふけいすう(その他表記)van't Hoff's coefficient

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ファント・ホッフ係数」の意味・わかりやすい解説

ファント・ホッフ係数
ふぁんとほっふけいすう
van't Hoff's coefficient

ショ糖などの非電解の水溶液の示す浸透圧Πは、溶液のモル濃度cと絶対温度Tのみで定まる。気体定数Rを用いて、Π=cRTのように表せる。ところが塩化ナトリウムのような電解質溶液の場合にはこのままでは浸透圧と濃度の関係を表現できず、パラメーターiを導入して、Π=icRTのようにする必要がある。このiのことをファント・ホッフ係数という。このiは1より大となる。

 このようなパラメーターが必要となるのは、電解質が解離して、水溶液中に溶解しているイオンの数が増加するためである。電離度をαとし、電解質がn個のイオンに解離するものとすると、溶液中のイオンの数は、非解離の場合の1+(n-1)α倍となる。したがって、電解質1モルは、非電解質1モルのi倍、すなわち、1+(n-1)α倍の浸透圧を示すことになる。蒸気圧降下氷点降下沸点上昇なども同様にこのi倍となるはずである。逆にこちらから電離度を求めることもできる。

山崎 昶]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

法則の辞典 「ファント・ホッフ係数」の解説

ファントホッフ係数【van't Hoff coefficient】

電解質溶液の浸透圧は,非電解質に対してのファントホッフの浸透圧式*がそのままでは適用できないので,ファントホッフが導入した係数 i を用いると

πVinRT

のようになる.この i は電解質の解離度 α と関係づけられていて,n をモル濃度としたとき i=1+(n-1)α である.ファントホッフの因子*とも呼ばれる.

出典 朝倉書店法則の辞典について 情報

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