ケニアの民族運動指導者、政治家。出身部族はキクユ。ナイロビ市庁勤務のかたわら、1922年青年キクユ協会に参加、1928年キクユ中央協会(KCA)書記長になり、翌1929年土地返還問題(イギリス植民地化に対する反対運動の一環。「ケニア」の項「歴史」の章参照)でイギリスに渡る。その後ロンドン大学、モスクワ大学で文化人類学を専攻、1938年キクユ人の慣習を書いた『ケニア山に向かいて』を出版した。第二次世界大戦中にイギリス女性と結婚。1945年の汎(はん)アフリカ主義運動第5回マンチェスター会議ではエンクルマらと事務局で活躍した。翌1946年に帰国しケニア・アフリカ人同盟(KAU)党首となり反植民地闘争を展開。1952年のマウマウの反乱直後に逮捕され、9年間獄中生活を送った。1960年ケニア・アフリカ人民族同盟(KANU)が結成され、KANUは制憲会議後に行われた選挙大勝後の組閣にあたってケニヤッタの釈放を要求。1961年8月釈放され11月KANU総裁に就任した。1963年12月独立ケニア初代首相、翌1964年の共和国移行とともに大統領に就任。1974年には終身大統領になったが、1978年8月22日病死した。
[林 晃史]
ケニア独立運動の指導者,初代大統領。ムゼー(スワヒリ語で〈長老〉の意)の名で国民に敬愛された。1928年に民族運動組織キクユ中央協会(KCA)書記長となり,機関紙で健筆をふるう。翌29年,土地問題陳情のため渡英。31-46年の第2回渡英中,ヨーロッパを回り,モスクワでも勉学するとともに,ロンドン大学で音声学,人類学の造詣を深め,出身部族であるキクユ族の生活を描いた《ケニア山のふもと》(1938)等を執筆。47年ケニア・アフリカ人同盟(KAU)党首となり,52年に急進派テロ事件の首謀者の嫌疑で投獄された。61年釈放後,ケニア・アフリカ人民族同盟(KANU)党首となり,63年5月の選挙により首相に就任。同年12月にケニアが独立し,翌年12月の共和制移行に伴い,初代大統領となった。野党非合法化等の強硬策もとったが,政権はおおむね安定し,死去まで大統領を務めた。この間,アフリカ人優遇政策をとる一方,在住白人入植者に対して穏健な措置を講じ,親欧米外資導入政策と相まって,ケニアにアフリカ諸国で有数の経済発展をもたらした。ナイロビ市内に彼の廟が造られている。
執筆者:池野 旬
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1890頃~1978
東アフリカ,ケニアの独立運動指導者,初代大統領(在任1964~78)。1947年ケニア・アフリカ人同盟(KAU)委員長となり,52年10月マウマウ戦争首謀者として投獄されるが,61年の釈放後ケニア・アフリカ人同盟(KANU(カヌ))の党首となり,63年5月の選挙で首相に就任。ケニア独立(63年12月)後,64年12月共和政移行をもって初代大統領就任。親欧米政策のもと,ハランベーに代表される自助奨励,アフリカ人優遇政策により経済発展を実現。主著『ケニヤ山のふもとで』。
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…これが九つのクランの起源だという。このような伝統的な文化と生活様式については,ケニアの初代大統領ジョモ・ケニヤッタがロンドン大学で人類学を学んでいるときに書いた《ケニア山のふもと》(1938。邦訳あり)に詳しく描かれているが,キクユは植民地支配に最も大きな影響を受けた民族であり,その生活も20世紀に入ってから急激に変化することになる。…
…ほかに北部の半砂漠地帯にはパラ・ナイル語系のトゥルカナ族(28万),や,クシ語系のソマリ系住民(42万),レンディーレ族,ボラナ族,ガブラ族,ガラ族などのラクダ,羊,ヤギなどを飼養する牧畜民が分布する。 キクユとルオの対立にみるような部族対立の解消のため,初代のケニヤッタ大統領は〈ハランベー(力を合わせて働こう)〉のスローガンを掲げて国民としての統合を求めた。有力部族のキクユ族から出たケニヤッタが亡くなったあと,後継にはキクユ,ルオ,カンバなどの有力部族を避け少数部族のトゥゲン(カレンジンに含まれる)出身のモイ大統領が選出された。…
※「ケニヤッタ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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