フィリピン通商法(読み)フィリピンつうしょうほう

改訂新版 世界大百科事典 「フィリピン通商法」の意味・わかりやすい解説

フィリピン通商法 (フィリピンつうしょうほう)

通称ベル通商法フィリピン独立後のアメリカ・フィリピン間の経済関係を規定した法律。1946年4月アメリカ議会が制定し,同年7月のフィリピン独立の時点で両国間の行政協定として調印された。第2次大戦中の日本軍によるフィリピン占領と戦災は,輸出農産物に特化したフィリピンの経済構造と,地主,輸出農業者の支配する社会秩序を事実上解体し,経済自立化,すなわち産業の多角化と過度の対米依存からの脱却に踏み出す好条件を生み出していたが,同法はこの課題を大幅に遅らせることになった。第1に,両国間には植民地時代以来の無関税貿易が独立後8年間継続し,以後も74年までの20年間特恵関税率(毎年5%逓増)が適用されることになり,フィリピンの植民地型経済構造が維持される。第2に,平等待遇権と称する内国民待遇の規定に基づきアメリカ人,アメリカ企業はフィリピン国民同様に天然資源の開発・利用と公益事業の経営を許されることになり,民族資本圧迫をうける。なかでも内国民待遇条項はフィリピンの1935年憲法の修正を要したので重大な政治問題となったが,アメリカ側が並行するフィリピン戦災復興法(6億2000万ドルの対フィリピン戦災補償を規定)の支出に通商法のフィリピン議会承認を条件としたこと,フィリピン支配層がアメリカ市場維持を利益としたことのため支持派が押し切った。8年間の無関税貿易の期限切れ間近の再交渉の結果,55年調印された改訂協定(ラウレル=ラングレー協定)も,残る期間の関税逓増率をフィリピン側に有利に変更しただけで大筋は変わっていない。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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