日本大百科全書(ニッポニカ) 「フィンランド文学協会」の意味・わかりやすい解説
フィンランド文学協会
ふぃんらんどぶんがくきょうかい
Suomalaisen Kirjallisuuden Seura
フィンランドの言語、口承文芸、書承文芸に関する研究、資料の収集・採集・保存・整理・公開、出版、研究の助成と褒賞などを行い、フィンランド民族文化高揚のためにセンター的役割を果たしている協会。略称SKS。1831年創立。所在地はヘルシンキ。運営は、財政面では大部分を国家助成に、一部を会費・寄付により、人材の面では専任スタッフのほかに、学芸諸分野の人々の積極的な協力姿勢に支えられている。
とくに、研究・作家・翻訳活動を助成して、フィンランド語と口承文芸などの研究を刺激し、民族文化の科学的解明と、その成果に基づく民族意識形成に貢献したことで知られる。こうした活動に刺激され、のちに世界的に知られるようになった言語学者、口承文芸研究者、作家も多い。サモエードとウラル諸語の言語学者カストレン、『カレバラ』を編纂(へんさん)したE・ロンルート、『7人兄弟』の作者A・キビィ、国民的大詩人E・レイノ、口承文芸研究に地理・歴史学的方法を確立したK・クローン、昔話研究のA・アールネ、昔話・神話研究のM・ハービオMartti Henrikki Haavio(1899―1973)などである。
また、協会の口承文芸資料館Kansanrunousarkistoは、口承文芸の筆記資料約300万件、1万5000時間におよぶ録音資料と1100時間分のビデオ映像、約11万点の写真(2000年現在)を所蔵し、世界最大の口承文芸研究・資料・情報センターとして知られる。また、書承文芸資料館Kirjallisuusarkistoは、16世紀からの文献、手記、録音資料、写真資料を所蔵している。
そのほか、1931年以来、諸外国に通算223名(2000年現在)の通信員を委嘱したり、フィンランド文学の翻訳助成を行い、国際交流にも努めている。
[高橋静男・末延 淳]