改訂新版 世界大百科事典 「フェティス」の意味・わかりやすい解説
フェティス
François-Joseph Fétis
生没年:1784-1871
ベルギーの音楽学者。批評,作曲も手がけた。音楽教育の仕上げをパリ音楽院で受け,卒業後しばらくドゥエでオルガン奏者を務めたのち,1821年パリ音楽院の作曲教授となり,27年同校図書館司書に任命される。同年,音楽雑誌《ルビュ・ミュジカル》を創刊する。33年ブリュッセルの音楽院長となり,王室礼拝堂の楽長にも任じられた。批評家としてフェティスは,時代を鋭敏にとらえる姿勢を欠き,しばしばベルリオーズの嘲笑を買ったが,それだけ彼のまなざしが過去に向けられていたというべきであろうか。しかし,フランス音楽学の領域では重要な先駆的役割を果たした。《音楽家伝および音楽一般書誌学》8巻(1835-44)ほか多数の著作がある。民俗音楽,非西欧の音楽にも関心を示した点は,特筆してよい。
執筆者:平島 正郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報