改訂新版 世界大百科事典 「フクロミツスイ」の意味・わかりやすい解説
フクロミツスイ (袋蜜吸)
honey possum
Tarsipes spenserae(=T. rostratus)
有袋目フクロミツスイ科の哺乳類。オーストラリア南西部の森林にすむ。口先から約2.5cm(体長の約1/3)のびる長い舌で,花みつと花粉をなめとって食べる。花みつ食は,哺乳類の食性としてきわめて特異で,一部のコウモリ類を除き他に知られていない。小昆虫類も食べる。体長7~8.5cm,尾長8.8~10cm,体重10~20g。外観は食虫類のトガリネズミに似て,吻(ふん)が長くとがるが,これは長い舌を収めるためのものである。耳介と目は比較的大きい。長い尾はものに巻きつけることができ,樹上で体を支えるのに役立つ。体色は,オレンジ色をおびたうすい灰色の地に,背中に3本の縦縞がある。腹面はクリーム色。育児囊には4個の乳頭がある。茂みの中に葉で丸い巣をつくり,ふつう雌雄のつがいですむ。夜行性。雌は1産1~4子を生む。人目につくことは少ないが,ネコがしばしばとらえることから,個体数は少なくないらしい。
→有袋類
執筆者:今泉 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報