果実類の搾汁(さくじゅう)の総称。果物はもともと水分が多いため、これを搾れば簡単に果汁がとれる。ワインの発酵用としてつくられたものが初めと考えられるから、歴史は非常に古い。果汁は一般にジュースとよばれるが、法的には100%のものと規定される。薄めたり、調味、混合などして製品にしたものは果汁入り飲料、清涼飲料という。
[河野友美・山口米子]
JAS(ジャス)(日本農林規格)の分類による果実飲料には濃縮果汁、果実ジュース、果実ミックスジュース、果粒入り果実ジュース、果実・野菜ミックスジュースおよび果汁入り飲料がある。原料の種類別には、オレンジ、ウンシュウミカン、グレープフルーツ、レモン、リンゴ、ブドウ、パイナップル、モモと、その他に区分されている。トマトジュースとトマトミックスジュースはトマト加工品の規格に分類され、果実と野菜の混合ジュースは果汁が50%以上のものが果実飲料に含まれる。
果実飲料の原料となる果汁には、果実の搾汁、濃縮果汁、濃縮果汁を希釈して元に戻した還元果汁が用いられる。原料に還元果汁を用いた場合には「濃縮還元」と記載される。
果実ジュースは1種類の果汁(果実の搾汁、還元果汁、濃縮果汁など)を用いたもの。砂糖類や蜂蜜(はちみつ)等を加えてもよい。原料果実の名をつけて、オレンジジュース、リンゴジュースと表示する。2種以上の果汁を混合したジュースは果実ミックスジュース、柑橘(かんきつ)類の砂嚢(さのう)(小さい粒状の果肉)や他の果実の果肉の細断したものを加えたものは果粒入り果実ジュースと品名表示される。野菜の搾汁や裏漉(うらご)しと果汁を混合したもので果汁が50%以上のものは果実・野菜ミックスジュースという。砂糖類や蜂蜜等を加えることができ、「加糖」と表示することが義務づけられている。
以上のものは「ジュース」と品名にあるように希釈したものではない。果汁分が100%未満で10%以上に調整したものは果汁入り飲料に区分される。
JAS規格ではおのおのの飲料について使用できる果実の種類、果汁の濃度や風味、添加物などを規定し、名称(品名)、原材料、製造者、賞味期限などの表示を規定している。表示規制としては、生、フレッシュ、天然、自然の用語は使用が禁止、純正、ピュアーなどは果実ジュースで天然香料以外のものを使用していないものだけに限られる。
[河野友美・山口米子]
一般果汁では破砕と搾汁、篩別(ふるいわけ)・濾過(ろか)・清澄、脱気、殺菌などの工程がある。
(1)破砕と搾汁 原料に適した方法を用いるが、いずれの場合も、あまり強く搾汁すると苦味などの異味成分が混入するので注意を要する。とくに柑橘類は苦味が入らないよう、レモン搾り器のようなものを回転させて液汁のみをとる。
(2)篩別・濾過・清澄 搾汁された果汁は篩別機、遠心分離機、ホモジナイザー(均質機)などにかけ、果汁を均一化し粘稠(ねんちゅう)性を増す。透明な果汁を得るには、このほかに清澄操作を行う。
(3)脱気 搾汁された果汁は多量の空気を液中に含み、このまま放置すると酸素によって酸化し、褐変(かっぺん)や変質の原因となる。これを防ぐため、果汁を密閉容器の中に入れて真空にし、真空脱気を行う。
(4)殺菌 高温瞬間殺菌法で微生物を滅菌し、同時に酵素の働きを止める。果実飲料では93~94℃、30秒間熱殺菌後、急速に85℃以下に冷却する。冷却速度が遅いと果汁の品質が悪くなる。缶詰、瓶詰では、80℃程度で容器に熱充填(じゅうてん)する。
[河野友美・山口米子]
果汁は、短時間に新鮮な果実から搾汁し、加熱殺菌および酵素の破壊を行うため、ビタミンなどの成分はかなりよく残存している。したがって栄養的な飲料として有用である。しかし、希釈した果汁入り飲料になると、果汁としての栄養的価値は少なくなってしまう。果汁は、保存条件がよければ、数年間貯蔵しても風味および栄養価値の変化は少ない。
[河野友美・山口米子]
『三堀参郎・岡本義雄著『果汁の時代 日本果汁発展外史』(1982・食品出版社)』▽『日本果汁協会果汁技術研究部会編・刊『果実飲料技術発展史』(1990)』▽『星晴夫著『果実飲料入門』増補改訂版(1991・日本食糧新聞社)』▽『山崎三吉著『果汁ガイドブック 海外にみる生産・容器・流通・消費の現状と将来』(1992・日報)』▽『日本果汁協会監修『最新 果汁・果実飲料事典』(1997・朝倉書店)』
出典 母子衛生研究会「赤ちゃん&子育てインフォ」指導/妊娠編:中林正雄(母子愛育会総合母子保健センター所長)、子育て編:渡辺博(帝京大学医学部附属溝口病院小児科科長)妊娠・子育て用語辞典について 情報
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…果実や野菜のしぼり汁,およびそれを加工した飲料。日本では1894年ごろ和歌山県でミカンの搾汁を〈蜜柑水(みかんすい)〉と称して売り出したのが企業生産のはじめとされ,その後も散発的にこの種の果汁飲料が製造発売されたが,製品に欠点があり,広く普及するには至らなかった。1938年,アメリカでフランク・バヤリーが真空缶を用いる瞬間殺菌法を開発し,それまで行われていた加熱殺菌による変色やビタミンCの破壊などを防止しうるようになって,ジュースの工業生産は本格化した。…
※「果汁」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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