日本大百科全書(ニッポニカ) 「フサアナゴ」の意味・わかりやすい解説
フサアナゴ
ふさあなご / 房穴子
shorttail eels
硬骨魚綱ウナギ目フサアナゴ科の総称、またはそのなかの1種。本科は、体が太短いこと、肛門(こうもん)が体の中央部よりもかなり後方に位置すること、吻(ふん)は短くて、吻端は丸いこと、側線は完全で、頭部の後端から尾端まで体の側面を走ること、ほとんどの側線や頭部感覚孔は短い管状であること、鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)には歯がないことなどの特徴で、ウナギ目の他科の仲間から容易に区別できる。世界の海域から1属5種が知られ、そのうち日本近海からフサアナゴとバケフサアナゴの2種が報告されている。
[尼岡邦夫 2019年11月20日]
代表種
フサアナゴColoconger raniceps(英名froghead eel)は、相模(さがみ)湾、駿河(するが)湾、インド洋に分布する。体は頭部の後端付近でもっとも高い。尾部は後端に向かって細くなり、強く側扁(そくへん)する。肛門前長(吻端から肛門までの長さ)は尾部長よりも著しく長い。頭が大きくて頭長は全長の18~22%である。目は大きくて、眼径が吻長より大きい。前鼻管は管状で吻端近くに位置し、後鼻孔(こうびこう)は前鼻孔より大きく、裂孔状に開く。口は普通大で、口裂の後端は目の後縁付近に達する。上唇の縁辺は遊離しない。上下両顎(りょうがく)の歯は小さい円錐(えんすい)状。鰓孔(さいこう)は胸びれ下部近くに開口する。側線孔は管状に開き、その付近に小皮弁(皮質突起)が散在する。上側頭部に6個の感覚管孔がある。背びれは鰓孔の上部近くから、臀(しり)びれは肛門の直後から始まる。胸びれはよく発達する。体は黒褐色で、全長約50センチメートルになる。水深300~1134メートルにすみ、底引網できわめてまれにとれる。バケフサアナゴに似るが、本種は頭長が長いこと(バケフサアナゴは全長の17~19%)、目が吻長より大きいことなどの特徴で区別できる。
[尼岡邦夫 2019年11月20日]