改訂新版 世界大百科事典 「フジシダ」の意味・わかりやすい解説
フジシダ
Monachosorum maximowiczii (Bak.) Hayata
関東以西の深山にややまれに生じ,夏季に涼しく空中湿度の高い場所を好む,日本特産のコバノイシカグマ科の常緑多年生シダ植物。葉の中軸がつる状にのびて先端部に芽を生じ,林下の岩石地にしばしば群落をつくる。根茎は短く,斜上し,葉を叢生(そうせい)する。葉は深緑色から白緑色,葉柄を含めて長さ30~60cm,幅2~3cm,ほとんど無毛だが,葉柄の基部付近には,ほこりのような毛がある。羽片は細く,無柄,基部前側には耳垂がある。胞子囊群は羽片の辺縁近くに1列にならび,包膜はない。胞子は四面体形。近縁種のオオフジシダM.flagellare(Maxim.)Hayataは,葉が2回羽状となり,葉身は長三角形から卵状三角形,芽は葉身先端部の中軸上に生じる点で異なる。ともに全体に,コショウのような刺激性のにおいがある。これらの種は,葉の根茎からの出方や胞子囊群の形質によって,独立のフジシダ科とされることがある。
執筆者:光田 重幸
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報