化学辞典 第2版 「フッ化ヒ素」の解説
フッ化ヒ素
フッカヒソ
arsenic fluoride
【Ⅰ】三フッ化ヒ素:AsF3(131.92).フッ化ヒ素(Ⅲ)ともいう.三酸化二ヒ素As2O3にフッ化水素を140 ℃ で反応させるか,濃硫酸にAs2O3とフッ化カルシウムとを加えて蒸留すると得られる.三方すい型分子構造.密度約2.7 g cm-3.As-F約1.71 Å.∠F-As-F約96°.無色の油状液体.融点-5.96 ℃,沸点62.8 ℃.空気中で発煙する.水で加水分解してAs2O3とHFになる.アルコール類,エーテル,ベンゼンなどに可溶.ガラスを侵すので,鉄製容器に入れる.非金属の塩化物と反応してフッ化物にかえる.皮膚に浸透しやすい.有毒.[CAS 7784-35-2]【Ⅱ】五フッ化ヒ素:AsF5(169.91).フッ化ヒ素(Ⅴ)ともいう.AsかAs2O3と,乾燥した F2 との反応で生成する.無色の気体.気体では三方両すい型分子構造.密度約2.3 g cm-3(-53 ℃).As-F約1.71 Å(アキシアル結合),1.66 Å(エクアトリアル結合).融点-79.8 ℃,沸点-53.2 ℃.水で容易に加水分解する.ベンゼン,エーテル,アルコール類などに可溶.乾いていればガラスを侵さないが,湿気やHF共存では侵す.電子受容体で,電子供与体と錯体をつくる.液体HFに溶かすと電気伝導性を示す.アルカリフッ化物MFと加熱するとM[AsF6]を生じる.[CAS 7784-36-3]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報