改訂新版 世界大百科事典 「フュレー」の意味・わかりやすい解説
フュレー
phylē
古代ギリシアのポリスの下部組織をなす部族。ポリスはいくつかの部族から成るのが一般で,この意味では部族連合の性格をもつが,古代ギリシアの部族は,行政・軍事などの国家的機能を果たした。ポリスとしてのアテナイは,四つの部族(アルガデイス,アイギコレイス,ゲレオンテス,ホプレテス)から成り,各部族は三つの胞族(フラトリア)から成り,各胞族は30の氏族(ゲノス)から成り,各氏族は30人(30家族と見ることができる)から成っていたという古い伝承がある。上記4部族はしばしばイオニア諸市にも見いだされるところから,イオニアの4部族と考えられるが,必ずしも同一組織とはいえないものもあり,また別の部族名がつけ加えられたりしている。アテナイの4部族(その首長はフュロバシレウスと呼ばれた)は貴族勢力の地盤のようになっていたので,前6世紀末クレイステネスの改革によって廃止され,都市部,内陸部,海岸部の各部にその10分の1の区画をもつ10の行政単位となった。ドリス人においては,スパルタに見られるように,古来3部族(ヒュレイス,デュマネス,パンフュロイ)から成ると信ぜられるが,アルゴス,シキュオン,トロイゼン,メガラなどでは先住ギリシア人の部族とドリス人部族が混合してポリスをつくったようにみえる。
→部族
執筆者:太田 秀通
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報