1998年に登録された世界遺産(文化遺産)。フランスの4都市を基点とし、それが2つになってピレネー山脈を越えてスペインのプエンテ・ラ・レイナで合流し、サンティアゴ・デ・コンポステーラへと続く巡礼路である。サンティアゴ・デ・コンポステーラは、9世紀初め、イエス・キリストの十二使徒の一人、聖ヤコブ(スペイン語名サンティアゴ)の遺骸が発見された地で、やがてその地には大聖堂が建てられ人が集まり、町になった。巡礼路の長さはイベリア半島内だけでも約800kmあり、歩けば1ヵ月はかかる。巡礼者の数は最盛期の11~12世紀には年間50万人を超え、サンティアゴ・デ・コンポステーラはエルサレム、ローマと並ぶキリスト教三大聖地の一つになった。巡礼者たちは聖ヤコブの象徴であるホタテ貝を身につけ、飲みものを入れるヒョウタンを下げた杖を手にして聖地をめざしたが、巡礼者が増えるにつれ、修道院クリュニー会が救護院を組織し、宿と食事の世話をした。ロマネスク様式の修道院や聖堂も次々に建てられ、巡礼路は聖地に続くロマネスク様式の伝播の道ともなったことなど、その文化的な価値が認められ、世界遺産に登録された。また、スペイン側も「サンティアゴ-デ-コンポステーラの巡礼路」として世界遺産に登録されている。◇英名はRoutes of Santiago de Compostela in France