化学辞典 第2版 「フルオロホウ酸」の解説
フルオロホウ酸(塩)
フルオロホウサンエン
fluoroboric acid(fluoroborates)
通常,HBF4(87.81)およびその塩をいう.ホウフッ化水素酸ともいう.IUPAC命名法による正式名称はテトラフルオロホウ酸.H[BFn(OH)4-n](n ≦ 4)の全部を含めることもある.商業的には48~50% HBF4水溶液をさすことが多い.HBF4はホウ酸とHF(モル比1:4)の水溶液中の発熱反応で得られるが,純粋なHBF4は単離されていない.H3O・BF4の結晶は得られている.硝酸よりも強い非常に強力な酸である.アルカリ金属塩,遷移金属塩そのほかが,HBF4と金属酸化物,水酸化物か炭酸塩との反応,BF3と金属酸化物との反応,またはホウ酸,HF,金属炭酸塩から次の反応で得られる.
2H3BO+8HF+ MⅠ2CO3 →
2MⅠBF4+7H2O+CO2
HBF4の水溶液は室温ではガラスなどを侵さないが,加熱するとしだいに加水分解してH[BFn(OH)4-n]となり,F- を遊離して,ガラスを侵すようになる.アルカリ金属塩は [BF4]- が過塩素酸イオンCCl4-と半径や形が似ているため類似点があり,たとえばNa塩は水に易溶であるが,K塩は冷水に難溶.酸および塩水溶液は腐食性のためにプラスチック容器に貯蔵する.トリフルオロ(ヒドロキソ)ホウ酸H[BF3(OH)]は,計算量のBF3と水との反応,またはHBF4の加水分解などで得られ,普通は一水和物で,室温では無色の液体,凝固点5.4 ℃ で,固体は斜方晶系.アルカリ金属塩も得られている.ジフルオロジヒドロキシホウ酸H[BF2(OH)2]は,計算量のBF3と水との反応,またはB2O3とHFとの反応で得られる.無色の粘性のある油状液体.融点約4 ℃.[BF4]-,[BFn(OH)4-n]- ともにBのまわりにF,OHがほぼ正四面体型に結合している.NaBF4ではB-F0.141 nm.H3O+[BF3(OH)]-ではB-O0.156 nm,B-F0.137 nm.NaBF4はフッ素化剤として用いられる.遷移金属塩,重金属塩は電着・めっき用溶液として利用される.「硼弗化水素酸及びその塩類」という名称で毒物及び劇物取締法・政令・劇物.「ほう素及びその化合物」として化学物質排出把握管理促進法第1種指定.「弗素及びその水溶性無機化合物」として労働安全衛生法・名称等を通知すべき危険物及び有害物に指定されている.[CAS 16872-11-0:HBF4][CAS 13755-29-8:NaBF4][CAS 14075-53-7:KBF4][CAS 38465-60-0:CuⅡ (BF4)2][CAS 14104-20-2:AgBF4]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報