化学辞典 第2版 「フルオロリン酸」の解説
フルオロリン酸(塩)
フルオロリンサンエン
fluorophosphoric acid(fluorophosphates)
H3PO4をフッ素化したものの総称.【Ⅰ】モノフルオロトリオキソリン(Ⅴ)酸(塩)(monofluoro-phosphoric acid(onofluorophosphate)):H2PO3F(99.99).(HO)2P(-F)=O.
酸;工業的には,計算量の五酸化リンとフッ化水素とを反応させると得られる.実験室では,Na塩水溶液を H+ 型陽イオン交換樹脂カラムを通すと酸の水溶液が得られる.酸は無色,粘性のある液体としてのみ存在する.正四面体型の [PO2F2]- を含む.P-O約1.51 Å,P-F約1.59 Å.水に易溶.水溶液は二塩基酸,K1 約0.28,K2 1.58×10-5.30 ℃ で固化し,-70 ℃ でガラス状になる.185 ℃ で分解する.
塩;Na塩は,無水三リン酸ナトリウムを無水NaFとともに約800 ℃ に加熱すると得られる.融点625 ℃.室温空気中で安定である.水に易溶.加水分解して,リン酸塩と F2 になる.酸性では速く,中性では遅い.虫歯予防用に歯磨き剤などに入れる.NaFより毒性が少ない.[CAS 13537-32-1]【Ⅱ】ジフルオロジオキソリン(Ⅴ)酸(塩)(difluoro phosphoric acid(difluorodioxophosphate)):HPO2F2(101.98).(HO)P(-F)2=O.
酸;モノフルオロリン酸と同方法で一緒に生成するので,減圧蒸留で分離する.正四面体型の [PO2F2]- を含む.密度約1.82 g cm-3.P-O約1.47 Å,P-F約1.57 Å.∠O-P-O約122°,∠F-P-F約97°.水に易溶.水溶液中ではしだいに分解する.炭化水素の異性化やポリマー化の触媒,金属の洗浄剤などに用いられる.
塩;Na塩は,フッ化水素ナトリウムNaHF2とP2O5とを約300 ℃ に加熱するか,NaPF6とメタリン酸ナトリウムの計算量混合物を溶融反応させると生成する.K塩やNH4塩もほぼ同様に得られる.[CAS 13779-41-4]【Ⅲ】[別用語参照]ヘキサフルオロリン(Ⅴ)酸(塩).
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報