化学辞典 第2版 「ヘキサフルオロリン酸」の解説
ヘキサフルオロリン(Ⅴ)酸(塩)
ヘキサフルオロリンサンエン
hexafluorophosphoric(Ⅴ) acid(hexafluorophosphate(Ⅴ))
酸:HPF6(145.97).市販品はP2O5と無水HFとを混合してつくったもので,不純物も含むが,冷却するとHPF6・6H2Oの結晶を析出する.純粋なものは液状のSO2中でPF5とHFとを反応させてつくる.六水和物は無色の結晶で,融点31.5 ℃.潮解性があり,水に易溶.強酸である.加水分解してH3PO4とHFになる.[CAS 16940-81-1]
塩:MⅠPF6(M = アルカリ金属,アルカリ土類金属,NH4,Agなど).また,PF6を配位した金属錯体もある.たとえば,アルカリ金属塩やNH4塩は,AgまたはAl製反応容器中で,過剰の液状HFに,各金属の塩化物(またはフッ化物)とPCl5とを加えて反応させると,沈殿として析出する.Na,K,NH4の無水物はいずれも立方晶系,NaPF6・H2Oは斜方晶系である.いずれも正八面体型のPF6-を含むイオン結晶である.P-F約1.57 Å.ただし,金属によりやや異なる.Na塩の一水和物ではややひずみ,P-F約1.73 Å(軸方向),1.58 Å(赤道面)である.アルカリ金属などの塩は,加熱するとPF5を遊離する(PF5の製造法).水に対する溶解度は,過塩素酸塩に似て,K塩や(CH3)4N塩は小さいが,そのほかのアルカリ金属塩,アルカリ土類金属塩,Ag塩などは可溶性である.水溶液は低温時,とくにアルカリ性では安定であるが,飽和に近い濃厚溶液としたり,加熱したりすると加水分解しやすい.(C2H5)4N[PF6]は,殺菌剤などに用いられる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報