日本大百科全書(ニッポニカ) 「フレイム」の意味・わかりやすい解説
フレイム
ふれいむ
Janet Frame
(1924―2004)
ニュージーランドの小説家。短編小説家。第二次世界大戦後の女性作家の第一人者。ダニーデン生まれ。短編小説第一作『ラグーン(礁湖)』(1951)はデッサン(寸描)も含めて24の話からなる短編集だが、『ラグーン他短編小説』として版を重ねた(1990、91、93)。通常の大人の世界から隔絶された外国の精神科病院を設定し、それを子供の視点で描いたこの短編集は、フレイム自身が誤って数年間を精神科病院で過ごさなければならなかった少女期の体験をもとにしたものである。これは、ヒューバート・チャーチ賞受賞作となったが、そのために退院が許可され、ニュージーランドではフランク・サージソンに次ぐ小説家にまで成長した。その後は、『島へ』(1982)、『私のテーブルの天使』(1984)、『ミラー・シティからの使節』(1985)を著したが、これらはいずれも自伝的小説である。『ふくろうは鳴く』(1957)が健常者からはずれた世界を描くのも、『レザバー――短編とスケッチ』(1963)で、病気・死という題材が扱われるのも、フレイム自身の内奥に呼応する世界であるからか。いずれの短編小説も再版され続けているが、小説も版を重ねている。
[古宇田敦子]
『中尾まさみ・虎岩直子訳『エンジェル・アト・マイ・テーブル』1・2(1994・筑摩書房)』▽『百々佑利子、ジョン・ホプキンズ監訳『現代ニュージーランド短編小説集』(1981・評論社)』