日本大百科全書(ニッポニカ) 「フロー効果」の意味・わかりやすい解説
フロー効果
ふろーこうか
flow effects
公共投資による社会資本の整備過程で、生産、雇用、消費などの経済活動が活発になって生まれる短期的な経済効果。道路、空港、橋、上下水道、住宅、防波堤などのインフラ設備を公共投資により整備することで、建設業を中心にさまざまな産業の生産活動が活発になり、これにより新たな雇用が生まれ、所得増を通じて消費などが派生的に拡大する効果をさす。フロー効果を定量的に分析するため、(1)乗数効果、(2)生産誘発効果、(3)就業誘発効果、の三つを測る手法がとられる。乗数効果は、社会資本(公的固定資本形成)が1単位増えた場合に誘発される国内総生産(GDP)の増加量で示す。生産誘発効果は公共投資によって最終需要が1単位増加した場合に誘発される各産業の生産増加量で示す。また就業誘発効果は、公共投資によって誘発された各産業の就業者の増加量で示す。
社会資本整備の効果にはフロー効果とは別に、整備された社会資本が十分に機能することで生まれるストック効果があり、中長期的な防災力の向上、衛生環境の改善、快適性やゆとりの向上などが該当する。社会資本整備は本来、ストック効果を生み出す目的で行われるが、フロー効果には短期的に経済を拡大する「景気刺激効果」があるため、不況期の景気てこ入れ策として社会資本整備が行われることがある。大恐慌後の1930年代、アメリカ大統領のフランクリン・ルーズベルトがとったニューディール政策や、バブル経済崩壊後の日本政府の公共投資拡大は、社会資本整備のフロー効果を期待して実施されたものである。
[矢野 武 2016年5月19日]