改訂新版 世界大百科事典 「ブシュカン」の意味・わかりやすい解説
ブシュカン (仏手柑)
fingered citron
Buddha's Hand citron
Citrus medica L.var.sarcodactylis (Nooten) Swingle
特異な果形をしたかんきつ類で,シトロンの変種。和名は果実が人(仏)の手を思わせることに由来する。ブッシュカンともいう。常緑で枝の伸びはよいが大木にならない。枝はもろく,とげがある。花は白色5弁だが,斑入り品種は紫色を帯びる。四季咲性で花粉は稔性。果実はめしべの心皮(子房壁)が変形し,分離して指状に発達したもので,果肉はみられない。条件がよければ500g程度になる。一般に種子がなく,果皮は濃黄色で芳香がある。インド原産でインドシナ,ジャワには古くからある。中国でも古くから知られ,日本には中国から沖縄を経て江戸時代に伝わった。《農業全書》(1697)には〈枸櫞〉と記されている。ヨーロッパでは17世紀中ごろの書物に記載がある。日本では和歌山県などの暖地でわずかに栽培される。鉢物として観賞用にされ,また生花にも珍重される。果実は珍奇な形をしているだけでなく,芳香があるので置物としてもよい。中国では砂糖煮にして食用,薬用にされる。挿木繁殖が可能だが,寒さにはレモンより弱い。
執筆者:山田 彬雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報